Neurological Surgery 脳神経外科 31巻7号 (2003年7月)

GPLと情報の共有 高橋 明
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 「リナックス(Linux)」というのをご存じだろうか?コンピューターの基本ソフトウェアの一種でWindowsやMac OSと同列の関係にある.リナックスの開発手法は型破りな革命的なものだ.GPL(GNU General Public Liscense)と呼ばれるライセンスに基づいて,スウェーデンの若者,リーヌス・トーヴァルズによってオリジナルが創られた,その後世界中の開発者がインターネットを通じて,その発展に貢献している.しばしばリナックスは「オープンソース」や「フリーソフトウェア」と等価に語られるが,それは部分的に正しいだけで,その本質はGPLに基づいているということにある.GPLによると,ソフトウェアの開発者は自由にソフトウェアを改変できるが,それを配布するにあたって,「どこをどのように変えたか」という変更の履歴とともにソースコードを公開すること,配布するソフトウェアに同じライセンスを適用することが義務づけられている.著作権については,アメリカでは「ミッキーマウス法案」などに代表されるように保護期間の延長が進められているが,そのような考え方の対極に位置付けることもできるのがGPLだと思われる.エリック・レイモンドという人は「伽藍とバザール」という言葉で,システムを構築する過程の2つの両極端を見事に切り取っている.「伽藍」方式ではソースコードを非公開にし,少数の開発者がシステムを構築し,完成に近づいた段階で様々な環境下のテストを行う.

総説

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Ⅰ.はじめに

 癌の早期診断法の確立や手術・放射線・化学寮法などを組み合わせた集学的治療の最近の進歩により,癌治療全体としては着実な成績の向上がみられる.その中にあって,膠芽腫を代表とする悪性脳腫瘍は,依然致命率の高い腫瘍として取り残された感がある.その理由には腫瘍の強い浸潤性格や脳に言語野や運動野などの機能的重要領域が存在するため正常部分をつけてen blocに摘出する癌手術の一般的方針が実施困難であること,放射線・化学療法に対する感受性が低いこと,血行性転移は稀であるが髄液腔を介した播種転移があること等の特殊な要因が関与している.われわれ脳外科医の扱う悪性脳腫瘍には多数の組織型が存在し,それぞれにおいて化学療法に対する感受性には大きな差があるが,稀な腫瘍においてはエビデンスに基づいた治療法が確立されていないものも多い.一方最近の分子生物学的研究の発達に伴い,腫瘍細胞の増殖・浸潤に重要な分子群が次々と明らかにされ,それぞれを標的とする分子標的療法が開発され注目されている.今後の臨床への応用により,根本的な治療戦略の見直しおよび治療効果の向上が期待されている.本稿では,代表的な悪性脳腫瘍である1)悪性グリオーマ,2)悪性リンパ腫,3)(悪性)胚細胞腫,4)髄芽腫の4つの組織型をとりあげ治療法の変遷と,現在行われている標準的治療法および問題点,さらに治験段階の新治療薬についてレビューする.

解剖を中心とした脳神経手術手技

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Ⅰ.はじめに

 てんかんの手術は,術前検査法の飛躍的な発達と,日本でもてんかん手術の保険診療が認められてから,手術症例が増加してきた.手術手技についても,多くの手術法が新しく開発されて,その総集編は,2001年の「Epilepsy Surgery,2ndEdi-tion』7)が,最新のてんかん手術教科書として出版された.しかし,アメリカにおいては,てんかん手術は,反省期に入っており,結果が確実な手術のみを選択する施設が増加している.てんかん手術は,てんかんの原因,部位,発作型により,手術法も多岐にわたっていることより,本論文ですべてを網羅することはできない.てんかん手術の中で,最も確実な成績が得られるのは,難治性の内側側頭葉てんかんで,発作消失率は約80%である.しかも側頭葉内側起源の複雑部分発作は成人において最も多い難治性てんかんである.本論文では,内側側頭葉てんかんの手術について,最も基本的な1)前側頭葉部分切除術について詳説し,さらに2)経側頭葉極扁桃核・海馬切除術および3)選択的扁桃核・海馬切除術についても解剖を中心とした手術手技について述べる(Fig.1).詳細なpresurgical evaluationの結果に基づいて,適応が確認された症例に対してのみ手術が行われることになるが2,3),本論文では,手術適応については紙面の都合で割愛する.

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Ⅰ.はじめに

 頭部外傷後に時間の経過とともに意識状態が悪化する,あるいは頭蓋内血腫が増大するという病態は,古くから注目され,CT以前の時代には荒木の頭部外傷分類第IV型1),CT出現後は遅発性頭蓋内血腫2,6,11,12,14),Talk and Deteriorate3-5,7-9,13,15,16)などと呼称されてきた.これらの病態では,受傷後早期の意識状態は比較的良好であることより,GCS8以下の重症頭部外傷症例に比較し,受傷時の外力による一次性脳損傷は軽微であると推測される.それにもかかわらず,その死亡率は高率であり,発生を予測あるいは回避できる要因があるのか否か興味深い.

 われわれは,頭部外傷後,来院時GlasgowComa Scale(GCS)9以上であったにもかかわらず,その後に頭蓋内病変に起因して意識障害が進行した症例を増悪型頭部外傷とし,その病態の解析を行った.

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 Radiographical investigations of the hypothalamus by computerized tomography(CT)have rarely been performed despite the fact that the damage to the hypothalamus owing to serious intracranial organic diseases may cause neuro-genic pulmonary edema(NPE).

 We presented 22 consecutive cases of patients suffering from NPE caused by serious intracranial organic diseases and investigated the relationship between NPE and abnormal radiographical findings of the hypothalamus.

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Ⅰ.はじめに

 Fibrillary,protoplasmic,およびgemistocytic as-trocytomaから成るdiffuse astrocytoma(WHO分類grade Ⅱ12))の死亡原因はhigh-grade astrocytomaによる腫瘍死であることから21),その治療目標は悪性転化の予知と予防にあるといえる.しかし,その臨床的および生物学的性状は個々の症例により大きく異なるために悪性転化を確実に予測することは困難であり,治療方針に関しても統一された見解が得られていないのが現状である.最近のAmerican Association of Neurological Surgeonsのガイドライン6)によれば,積極的治療を開始する前に組織診断を確立することが唯一のスタンダードであるとされている.

 Evidencc based medicineに基づく治療法の確立が望まれるものの,diffuse astrocytomaではclassⅠ(randomized controlled trial)またはclass Ⅱ(well-designed case-controlまたはcohort study)の評価は行われにくい状況にある11).今後もclassⅢ(retrospective study)evidenceを積み重ねていくことが治療方針を確立するうえで重要な意義を持つものと考えられる.

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Ⅰ.はじめに

 トルコ鞍近傍部腫瘍の中で視神経系に発生する浮腫は視神経膠腫1,4,9)において通常みられ,また,頭蓋咽頭腫によって視神経が圧迫された場合にもみられ特徴的であると報告されている11,19).われわれは,視神経・視交叉・視索に沿って浮腫を生じた稀な転移性鞍上部腫瘍を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 椎骨脳底動脈循環不全の原因としては椎骨動脈の動脈硬化性病変が多く,その中でも起始部病変が高頻度である6).これらの疾患のうち器質的病変のある椎骨動脈起始部(V1 segment)の狭窄,閉塞に対する外科治療はtransposition of V1 seg-ment to subclavian artery7),V1 segment to com-mon carotid artervやconmon carotid artery to V1segment bypass graft1)等の方法が確立されている.一方,頭部回転時のみ椎骨動脈の狭窄が生じ,椎骨脳底動脈循環不全症状を呈する機能的病態が原因であるものがある.すなわち,変形性頸椎症に伴う骨棘,筋,腱組織による圧迫などが原因となる疾患である2,3,5,9).これらのうち,椎骨動脈起始部については星状神経節線維による機械的圧迫によって血管が固定され,頭部回転時に強い屈曲が生じ血管を狭窄あるいは閉塞してしまうことが原因4,6)であることが多い.今回われわれは,頭部回転によって増悪した椎骨動脈起始部屈曲に対し星状神経節線維切除による屈曲矯正を行い,椎骨脳底動脈循環不全が改善した2症例を経験した.本2症例をもとに頭部回転方向と椎骨動脈起始部の屈曲方向との関連性について検討したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 Schwannomaは原発性脳腫瘍の10.8%を占め,その多くは第8脳神経のvestibular divisionの末梢部より発生する10,14).しかしながら時に,脳脊髄神経と関連なくschwannomaが発生することが知られており,現在まで60例を超える報告がなされている.発生部位別に分類,検討されているが,発生由来については未だに不明点が多い10)

 今回われわれは,脳脊髄神経に由来せず中頭蓋窩硬膜に発生し,側脳室側角部に進展したschwannomaの稀な1例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 後腹膜腔神経鞘腫は比較的稀な疾患で,神経鞘腫の約3%が後腹膜腔に発生するといわれている5).後腹膜腔周囲の構造物は比較的可動性に富み圧迫症状が出現しにくく,その希有さも影響して後腹膜腔神経鞘腫は早期に発見することは困難であり,巨大腫瘍として発見されることが多い.

 後腹膜腫瘍への手術方法としては大きく分けて前方と後方からの到達法がある.腫瘍が主に後腹膜腔に進展しているか脊柱管内に進展しているかによって到達法を決めるべきである.特に神経鞘腫は易出血性であることが多く,後腹膜腔に大きく進展する腫瘍の場合は出血のcontrolが容易である点からも,前方からの到達法を選択すべきと思われる,今回われわれは,前方到達法にて摘出術を行った後腹膜腔仙骨前面の巨大神経鞘腫の2例を経験したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 椎骨脳底動脈解離において,虚血発症ののち,くも膜下出血を来すものは比較的稀である.近年報告例が散見されるようになったが,いまだその治療に苦慮することが多い.今回,われわれは脳底動脈閉塞による虚血にて発症し,その後脳血管撮影にて再開通がみられ,改善傾向を示していると考えられたにもかかわらずくも膜下出血を来した例を経験した.そこで,治療方針を含めて文献的考察を加え報告する.

連載 脳外科医に必要な臨床神経生理の基礎・1【新連載】

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I.脳機能マッピングの目的

 脳機能マッピングは,覚醒下もしくは全身麻酔下での術中マッピングと,硬膜下電極を用いて病室で行う慢性頭蓋内マッピングとに分かれる3,5,6).前者は手術操作が1回で済むという大きな利点を有する反面,手術中という時間の制眼が大きくて十分な検索ができないまま手術を行うことになる.ここでは後者の慢性的な硬膜下電極刺激による脳機能マッピングについて述べる.

 患者個人の脳機能を知ることが,病態の解明と手術治療戦略を考えるうえで重要である.これは術後の神経症状を最小限にして,てんかん焦点や脳腫瘍などの病変を最大限に摘出することにつながる.重要な脳機能部位としてOjemannらは,手の運動野と言語野であると述べている10).古典的な言語野であるBroca野やWernicke野は,患者個人により異なっている.側頭葉先端部の切除では機能障害が生じないとされていたが,最近では固有名詞の障害や,人物に関しての新しい学習ができなくなることが報告されている10,13)(Fig.1).さらに病態によっては,機能部位の偏位や移動が生じている12).術前に脳機能マッピングを行うことにより個々の脳機能部位を同定し,患者の症状・病態・部位を考慮して,手術アプローチや切除範囲の決定などに役立てることができる.

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症例提示

患者 51歳 女性

主訴 歩行障害

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
31巻7号 (2003年7月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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