Neurological Surgery 脳神経外科 18巻3号 (1990年3月)

交通事故対策に関連して 三輪 哲郎
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 私の尊敬する慈恵医大脳神経外科の中村紀夫教授は著書,「MRI vs CT100」(1986)の巻頭の中で「……1973年以後CTは広原の瞭火の如く忽ちにして世界中を一世風靡し,中枢神経疾患に関する従来の診断方法を変え,画期的な進歩を齎らした.次いで今度はMRIの機器の登場である.かつてのサンフランシスコの講習会(1973)で脳血管撮影像の講義をしてくれた神経放射線医が新たにMRIについての著書をかいているのをみると10年余の間のこの領域の発展はまことに感無量である.……」と急速な画像診断の発展を感嘆しておられる.

 実は私もこの講習会に参加していたのでその感想は全く同じである.

 私は現在私立医科大学の学長兼脳神経外科教授という兼務職についているため日常診療でのactivityは低下し且つ毎日の教室内情報に遅れ勝ちになっている.自分自身を強く戒めるため,医局の日課の一つ,朝礼に可及的率先出席して前日当直者の報告を聞く事にしている.(他の日課については紙面の都合上省かせて頂く)

脳腫瘍の組織診断アトラス

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1.臨床的事項

 脳腫瘍全国統計(vol 6)によれば,頭蓋咽頭腫は病理の確定した原発性脳腫瘍22898例中,1198例で,5.2%を占める.全年齢層にみられるが,特に5-9歳に頭蓋咽頭腫の割合がたかく,12.4%をしめている.

 病理学的には良性腫瘍のため,全摘出が理想であるが,腫瘍は,第三脳室に進展する場合が多く,手術侵襲は大きい.亜全摘以上の手術を原則とすることが望まれる.亜全摘でも放射線療法を追加することで,全摘出に匹敵する予後(10年生存率87%7))が期待される.

解剖を中心とした脳神経手術手技

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I.はじめに

 脳神経外科領域の手術において,時に頭皮欠損を生じ,その処理に難渋することがある.頭皮欠損部に頭蓋骨及び骨膜が残っているような場合には,遊離植皮術のみによる修復が可能であるが,脳神経外科領域で問題となる頭皮欠損では,骨膜はもとより頭蓋骨の欠損,場合によっては硬膜の欠損を伴うことが多い.それらの頭皮欠損に対しては遊離植皮術のみでは修復が困難で,遊離植皮術以外の形成外科的修復を行うことが必要となる.

 頭皮欠損を修復する形成外科的な術式としては,遊離植皮術,有茎皮弁移植術,マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)による遊離皮弁移植術などがあるが,脳神経外科手術の後に生じる頭皮欠損のうちの半数以上は有茎皮弁移植術のうちの横転皮弁手術の適応となる.この方法は,かなり以前より広く行われていて成書にも載っているが,脳神経外科医が初めて成書を見ながら,その手術をやってみようとしても,なかなかうまくいかないことが多い.横転皮弁手術を行う場合,最も大切なのはその作図法であり,その作図法の詳細について正しく,そして分かりやすく解説された成番はないようである.その作図にあたっては,頭皮欠損の大きさ,形,皮弁を作成する位置,皮弁の血行などを十分に考慮に入れることが必要である.

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I.はじめに

 水頭症の病態は症例によって異なるうえ,従来のシャントバルブは圧固定式であるため、設定圧を非侵襲的に変更することは困難である.今回,頭皮上で設定圧を随時容易に変更できるSophy圧可変式バルブを使用する機会があったので,その有用性と問題点について報告する.

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I.緒言

 悪性脳腫瘍に対して近年,温熱療法は,手術,放射線,化学,免疫療法に次ぐ第5の療法として登場して以来,各種臓器癌にその有効性が認められつつある.しかし脳腫瘍に対する温熱療法はまだその方法も確立していないし,その治療効果も一定していない.その理由として,脳の局所を確実に,しかも安全に加温する方法がないことと,脳が極めて分化した特殊な機能を有しているために手技上の制限があることなどである.従って,脳腫瘍の温熱療法を行うにあたって,最も重要なことは,厳密に脳腫瘍組織のみを加温し,周囲の正常脳,神経,血管等を加温しないことが,絶対条件となる.その他,異物を挿入するための感染,出血等も考慮されなければならない.現在他臓器癌で最も普及しているmicrowave,RF波による局所加温は,脳の場合頭蓋骨に妨害され,脳内に限局性の高温巣を作ることは,極めて困難である.従って,温熱療法のために頭蓋骨を切除したり10,11),頭蓋骨骨窓よりアンテナを腫瘍内に挿入して局所加温を行う方法が試みられているが6,8,9),いずれも上記条件を満たすものではない.

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I.はじめに

 閉塞性脳血管障害,特に頭蓋外病変に対する血行再建術はこれまでいろいろと報告されてきたが,主に自家静脈片移植が用いられ人工血管を用いた報告は比較的少ない1,3,8),この原因の一つとして,既存の人工血管が硬すぎて脳血行再建術には不向きであることが挙げられる.

 今回われわれは,頸動脈,椎骨動脈等の頭蓋外脳血管に応用可能な軟らかさを持つ人工血管を開発するために,その物理的特性と構造上の設計につき検討を加えたので以下に報告する.

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I.はじめに

 われわれは,慢性期脳虚血症例における脳血流不全の診断にあたって,133Xe SPECTとDiamox(acetazola—mide)testの有用性について検討を行い,報告した9)

 また,PET(positron emission tomography)における検討から,脳血流量(cerebral blood flow:CBF)と脳血液量(cerebral blood volume;CBV)の測定によって,酸素消費率(oxygen extraction fraction;OEF)の推測が可能であることが報告されて以来2,3,10-13),CBFとCBVをSPECTで測定し,脳循環予備能の診断を行う試みがなされるようになった7,17)

 今回,われわれは,99mTc-RBc SPECTによりCBVを測定し,慢性期脳虚血症例の脳血流不全の診断における有用性を検討するとともに,133Xe SPECTにおけるDiamox testとの関連を検討したので報告する.

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I.はじめに

 実験脊髄損傷に対する治療効果判定法としては,臨床的並びに病理学的検討の他に,大脳皮質知覚誘発電位や脊髄誘発電位(末梢神経刺激法又は脊髄刺激法)測定による電気生理学的評価法が行われている5,7,18,21,24,25).脊髄刺激法による脊髄誘発電位測定では,種々の条件下でも,比較的振幅の高い安定した電位が得られるため8-10,15,20),波形を治療前後に測定することにより,実験脊髄損傷に対する治療効果を判定することが可能と思われる.今回,われわれは,実験脊髄損傷(硬膜外衝撃法により作成)後の脊髄誘発電位(脊髄刺激法による)を経時的に観察することにより,受傷早期マンニトール投与並びに脊髄後正中切開法による外科的治療の有用性につき,検討を加えたので報告する.

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I.はじめに

 Hemangiopericytomaは,1942年StoutとMurray28)が最初に記載した稀な腫瘍であり,正常の内皮細胞を有した多数の毛細血管とその周囲にpericyteといわれる独特の細長い細胞が血管腔を囲んで厚く増殖する病理像を特微としている.従ってpericyteから発生するhemangiopericytomaは,毛細血管の存在する部であればいずれの部位からでも発生し得る.好発部位は皮下軟部組織及び骨格筋系であり,下肢に1/3が発生する1,7).頭蓋内に発生したhemangiopericytomaは数例の報告12,14-16,18)を除くと,すべてが髄膜より発生しており,その病理像はhemangiopericytic menigiomaと酷似しており鑑別は極めて難しく,ときに同一疾患とも考えられる.

 今回,われわれは胸髄髄内に発生したhemangioperi—cytomaを経験した.われわれの渉猟し得た限りでは最初の報告例と思われるので,本症例の臨床病理像及び髄内hemangiopericytomaに必要な鑑別診断について文献的考察を行った.

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I.はじめに

 頭部外傷により,小脳症候を呈することは比較的稀である.その頻度は,0.4-0.7%と言われている7,12).もし,この様な患者を診た場合には,後頭蓋窩血腫をも疑う必要があると言われている.頭部CTの普及した今日では,後頭蓋窩血腫の診断は,決して困難ではない.しかしながら,小脳症候の検査が可能な程度の,意識障害の比較的軽い頭部外傷患者の場合には,その患者が小脳失調を呈して,小脳の挫創が疑われても,実際にCTで小脳の異常が証明されることが少ない,ということもまた事実であるように思われる8)

 MRIは,骨のアーチファクトによる影響をうけないため,特に後頭蓋窩の観察に,その威力を発揮する.また,CTでは検出されない様な,小さな脳挫傷や脳浮腫を,MRIは描出することができるということも知られている2,3,5,10)

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I.はじめに

 脊髄硬膜外膿瘍は,比較的まれな感染症であるが,ほとんどが胸髄レベルに発生し,頸髄に発生するものは非常にまれであるとされる4,5,13,16).また本症では急速に脊髄圧迫症状が進行し,脊髄に不可逆的な変化を来しやすいことからその予後は悪いが,特に頸髄に発生した症例では呼吸筋麻痺を来すために死亡率が非常に高い12,13,15)

 今回頸髄に発生した硬膜外膿瘍の1例を経験したので,文献的考察を加え,報告する.

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 I.はじめに 大脳半球間硬膜下血腫(lnterhemispheric SubduralHematoma,以下ISHと略す)は,小児においては比較的よくみられる1)が,成人ではCTが普及し診断が容易となった今日でも,なお,その報告例は少なく,稀な疾患であるとされている.今回,われわれは,外傷を契機に両側大脳半球間に硬膜下血腫をきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する.

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I.はじめに

 Percutaneous transluminal angioplasty(PTA)は全身の血管閉塞性病変に対して広く施行されるようになったが脳神経外科領域においては塞栓の危険性のため適応が限られている.特に頸動脈領域の病変に対するPTAの報告例はきわめて少ない.われわれは多発性頭蓋外閉塞性病変を認めた脳梗塞症例に対して頸動脈および鎖骨下動脈狭窄の2ヵ所にPTAを施行し良好な結果を得たので報告する.

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I.はじめに

 Von Recklinghausen氏病に伴わない小児の聴神経腫瘍は比較的稀と思われる.

 今回われわれは,早期診断のもとに,外科的治療を行い,顔面神経の機能を温存せしめた小児の聴神経腫瘍の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内内頸動脈または中大脳動脈狭窄症に対し,浅側頭動脈—中大脳動脈吻合術(以下 STA-MCA bypass)を施行した後,もとの狭窄部位が閉塞に転化する現象があることはよく知られているが2,4-6),浅側頭動脈—上小脳動脈吻合術(以下STA-SCA bypass)後の報告は極めて少ない.今回われわれは脳底動脈狭窄症に対しSTA—SCA bypass術を施行した後,脳底動脈の狭窄性病変が閉塞に転化し脳幹部穿通枝領域に脳梗塞をきたした症例を経験したので報告する.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
18巻3号 (1990年3月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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