Pharma Medica 36巻5号 (2018年5月)

特集 ワクチン・予防接種:わが国における現状と課題

特集にあたって 岡部 信彦
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わが国では海外諸国に比して使用できるワクチンの種類が少なく,「ワクチンギャップ」という言葉も生まれた。このワクチンギャップを埋めようという大きな流れが生じ,平成25(2013)年4月に予防接種法が改正され,ワクチンギャップ問題のほか,副反応報告の法制度化,予防接種施策を総合的かつ継続的に評価・検討する仕組みの構築など,予防接種制度について幅広い見直しが行われた。その後にも定期接種化されたワクチンあるいは新たなワクチンの製造販売承認など,数的なワクチンギャップはかなり解消されてきた。一方,接種するワクチンの種類・回数が急速に増えてきたことから,小児へのワクチン接種スケジュールは大変複雑になってきており,わかりやすくする,接種回数を少なくする,そして複数のワクチンを1つにまとめる混合ワクチンの開発などが進められているところであるが,これらの解決にはもう少し時間が必要である。

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ワクチンは,感染症の予防に最も特異的であり,かつ効果の高い医薬品(生物学的製剤)である。ワクチンを接種することを予防接種という。接種の方法には,皮下接種,筋肉内接種,経口接種があり,BCGのように管針を用いて経皮接種する場合もある。さらに,経鼻接種や,皮膚への貼付などの方法で接種するワクチンの開発などが進められている。わが国では,予防接種法に基づく定期の予防接種(以下,定期接種)と,予防接種法には基づかないが,医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づいて製造販売承認されたワクチンを接種する,定期外接種(以下,任意接種)がある。なお,定期接種は,政令で対象年齢が定められているため,その年齢以外で接種する場合は任意接種となる(表1)。「KEY WORDS」予防接種法/感染症発生動向調査/感染症流行予測調査/予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会

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わが国の予防接種は,予防接種法による定期接種と,法に基づかない任意接種に分かれる。予防接種法は,ワクチンで予防可能な疾病の蔓延を予防し,公衆衛生の向上に寄与するとともに,予防接種による健康被害の迅速な救済を目的としており,法令で対象疾病を指定し,A類疾病についてはその予防接種を国民に対して勧奨し,接種を受けるよう努めなければならないとしている。本稿では予防接種法を概説し,定期予防接種の必要性と課題についてワクチンごとに述べたい。「KEY WORDS」定期予防接種/予防接種法/予防接種基本計画/スケジュール

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特定の感染症を世界から根絶・排除することにより,疾病負担を削減し臨床・公衆衛生コストを下げることができる。過去には天然痘が根絶(eradication)に成功したが,ポリオは根絶まであと一歩の状態,麻しん・風しんは次に排除(elimination)すべき疾患,という位置づけである。ワクチンによる根絶・排除は途上国においては必ずしも容易ではなく,わが国にとっては流行国からの輸入例が課題である。本稿では世界保健機関(World Health Organization;WHO)における議論と日本の現状と課題について述べる。「KEY WORDS」VPD(Vaccine Preventable Disease)/WHO(World Health Organization)/GPEI(Global Polio Eradication Initiative)/GVAP(Global Vaccine Action Plan)

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2017年度のわが国の高齢化率は27.7%となり,超高齢社会の範疇に入り,高齢者における総医療費の高騰が問題になっている。したがって,高齢者における疾患の予防は喫緊の課題である。疾患予防対策のなかではワクチンは重要であるが,小児と異なり高齢者ではワクチン接種の関心が薄いといわざるを得ない。高齢者に積極的に接種すべきワクチンとして,インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチン,帯状疱疹ワクチンを取り上げたい。「KEY WORDS」超高齢社会/インフルエンザワクチン/肺炎球菌ワクチン/帯状疱疹ワクチン

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2008年のHib(インフルエンザ菌b型)ワクチン以降,日本においても小児用ワクチンが次々と承認され,国内で使用できるワクチンの種類は大幅に増加した。また,2010年のワクチン接種緊急促進事業(公費助成)を契機として,原則として無料で接種を受けられる定期接種ワクチンの種類も少しずつ増えてきた。このように,わが国の乳幼児の予防接種環境はこの10年で改善され,乳幼児が通常に接種するワクチンの種類や回数は大幅に増加した。いうまでもなく,ワクチンは適切な時期,すなわちワクチンで予防できる疾患の好発年齢より前に接種しなければならない。そのため,単独接種が通常の接種方法であったわが国の小児医療の現場においても,複数ワクチンの同時接種を実施する必要性が高まり,今では同時接種が一般的に実施されるようになってきた。本稿では,同時接種の方法や意義などについて概説するとともに,同時接種にかかわる課題や混合ワクチンの将来についても考察する。「KEY WORDS」同時接種/混合ワクチン/定期接種実施要領/健康被害救済制度

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患者や医療者を含めて多数の者が出入りする医療機関において,予期せぬ感染症伝播をまったくゼロにすることは現実的には不可能である。患者は自らの症状を感染症と気付かずに受診する場合もあれば,医療者が不顕性感染者として病原体を保有排泄していることもある。しかし,そのような状況のなかでわれわれは,感染症伝播のリスクを最小限に抑えるように努めることが不可欠であり,ワクチンという予防手段を有効に使いたい。患者には宿主免疫能が低下した者も多く,感染症罹患は大きな健康被害につながる。そして,免疫低下者については,生ワクチンを接種することが不適当な者が多く,不活化ワクチンの効果は十分に期待できない場合がしばしばである。したがって,医療機関という集団のなかで,ワクチンで予防することができる疾患の伝播を防ぐためには,医療者に対する予防接種が主戦略となる。「KEY WORDS」院内感染/医療者/職業感染予防/ワクチン

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生殖器に感染するヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)は,男女を問わず,性交経験のある人はほぼすべて感染している。HPV感染によって子宮頸癌,咽頭癌,肛門癌,陰茎癌,外陰癌,腟癌などが発生する。これらのHPV関連癌の多くは,HPV16/18型に起因する。これらのHPV感染は,HPVワクチンによって予防できることが海外で証明され,世界71ヵ国ではHPVワクチンが定期接種として導入されている。しかし,わが国ではマスメディアの報道によりHPVワクチン接種の勧奨中止となり5年が経過している。現在16歳の1学年は完全に無料接種を受けられない事態となってしまった。HPVワクチンの必要性と本来の定期接種の状態に戻すためにするべきことを考察する。「KEY WORDS」ヒトパピローマウイルス(HPV)/子宮頸癌/尖圭コンジローマ/HPVワクチン

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ムンプス感染は,流行性耳下腺炎,おたふくかぜ,とも呼ばれている。ムンプスウイルスはパラミクソウイルス科に属するRNAウイルスであり,飛沫感染を起こし,感染力も強いが不顕性感染も30~40%あるとされている。ムンプスは学校保健法では第5類感染症に指定されており,発症した場合には登校も制限される。しかし,最近もムンプスの大流行があったことは記憶に新しい。これは,予防接種率が低いために流行しやすいためとされている。「KEY WORDS」高度難聴/不顕性感染/一側難聴

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インフルエンザは毎年流行を繰り返し,流行年度には高齢者を中心に超過死亡が増加することから一部個人負担で高齢者へのインフルエンザワクチンが勧奨接種のワクチンとして推奨されているが,その有効性には限界がある1)2)。高齢者の肺炎だけでなく,乳幼児のインフルエンザ脳症の合併症などからインフルエンザの重要性の認識が高まってきた。特に,2017/18シーズンには株の選定後,ワクチンメーカーで製造を始めたが増殖(収量)が悪く,製造株を2016/17シーズンの株に変更し製造を始めた。10月の供給が遅れ接種がずれこんでいったが,12月にはほぼ接種が完了できた。それが関連していると思われないが2017/18シーズンには未曾有の流行が認められた。2017年11月末からH1とB山形の混在流行が始まり,12月から2月初めにかけてH3も混在し患者発症例数は増加の一途であった。「KEY WORDS」インフルエンザワクチン/高増殖株/自然免疫/HI抗体

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ワクチン接種は確立された疾患予防の手法であり,その有効性については他稿で述べられている通りである。十分な有効性をもつワクチンが次々と登場するなかで,健常人に行うという性質上,次にその安全性が問題になったのは必然であろう。微生物学・免疫学の発展,そして技術上の革新によって,より高度に精製された抗原が開発された。しかし,皮肉なことに高度に精製された抗原は多くの場合その有効性の減弱を示し,結果として免疫賦活物質としてのアジュバントを必要とすることとなった。「KEY WORDS」ワクチン/アジュバント/副反応

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ワクチン先進国を目指すには,よりよい予防接種制度を整備し,より多くの方が適切にワクチン接種を受けられるようにして,ワクチンで予防できる疾病(vaccine preventable disease;VPD)を今以上に確実に予防していくことが必要である。そのためには,産官学が積極的に連携し,社会への適切な情報発信を行っていくことが求められている。そのなかでアカデミアが果たすべき役割として最も重要なのは,やはり科学的な根拠に基づいた正確な情報の提供であると考えられる。本稿ではワクチン・予防接種の普及に向けて現在アカデミアが行っている活動を紹介し,今後のアカデミアとして向かうべき方向性について考えてみたい。「KEY WORDS」アカデミア/科学的根拠/情報発信/予防接種制度/産官学連携

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その他

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連載 一目でわかるクリニカルレシピ

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ワクチン、予防接種は病気にかからないこと、他人にうつさないこと、羅患した際に最小限で抑えるために行われます。それとともに体内の免疫を良くすることは私たちの体を守ってくれる重要な仕組みです。私たちの日常生活の状態と、体に備わる免疫機能の状態は密接に関係しています。加齢や日々のストレス、栄養バランスの偏りや、生活習慣などにより、日常生活のバランスが崩れると免疫機能の低下へと直結します。免疫力が低下すると感染症にかかりやすくなったり、悪化し、がんなどの病気を発症するリスクが増加します。また、病気だけでなく、免疫力の低下によって血行が悪くなると、新陳代謝も低下して悪影響を及ぼします。免疫が落ちやすいのは65歳以上の高齢者、1歳前後の幼児、高血糖で白血球が感染部位に行き渡らず感染のリスクの高くなる糖尿病などの方です。

ACC学会レポート

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連載 慢性便秘症診療の潮流 インタビュー(1)

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基本情報

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Pharma Medica
36巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-5803 メディカルレビュー社

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