作業療法 38巻2号 (2019年4月)

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要旨:我々は,活動や参加レベルの向上を支援する「生活目標設定手法(Life Goal Setting Technique:LGST)」を導入し,関係多職種が連携する介護予防ケアマネジメントを考案した.これを通所型介護予防教室参加者に実施し,クラスター非ランダム化比較試験を用い,介護予防と主観的健康感の向上に及ぼす効果を12週間の教室開始時,終了時と教室後3ヵ月時,6ヵ月時に調査した.結果,介護予防効果の指標とした基本チェックリストの該当基準による予防事業対象者から非該当者に変化した割合は,介入群は約60%で,対照群の約40%に比べ有意に高く,主観的健康感も高かった.介護予防効果は教室後3ヵ月間持続することも明らかとなった.

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要旨:本研究は,急性期入院高齢患者におけるチームでの廃用症候群予防について,各職種の実践状況および作業療法士(以下,OT)の役割を明らかにすることを目的とした調査研究である.OT・理学療法士(以下,PT)・看護師を対象に,廃用症候群予防の実践度およびOTの役割の認識について回答を求め,比較検討した.その結果,各職種の主たる職域は,OTは生活機能への介入,PTは身体機能への介入,看護師は病棟でのケアとなった.また,OTの役割の認識には,職種間で部分的な相違があることが明らかとなった.OTがチームで効果的に作用するために,主観的・客観的な役割の認識を理解し,OTの専門性を示す機会の拡充や表現の工夫の必要性が示唆された.

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要旨:本研究の目的は,自閉スペクトラム症(以下,ASD)児の食に関する行動を測定する尺度である「食に関する行動質問紙」の妥当性と信頼性を検討することであった.3〜18歳のASD児を対象に保護者に回答を求める調査を実施し,分析対象者は384名であった.ASD児の平均年齢は9.8±4.2歳,性別は男児301名,女児82名,未回答1名であった.因子分析の結果,5因子42項目となり,因子は【偏食】,【不器用・マナー】,【食への関心・集中】,【口腔機能】,【過食】と命名された.Cronbachのα係数は全体で0.930,5因子において0.781〜0.923であり,「食に関する行動質問紙」の構成概念妥当性,内容的妥当性,信頼性(内的整合性)が確認された.

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要旨:箸を用いた実際の食事に必要とされる正常な全身の関節角度と,その角度変化を検討することを目的に,三次元(3D)動作解析を行った.健常者45名の食事動作を,モーションキャプチャーシステムにて測定し,上下肢・頸部・体幹の関節角度を明らかにした.このうち,肘関節屈曲が最大約133°および最小約99°,手関節背屈が最大約30°および最小約10°であることを示した.また,関節角度の経時変化から,箸で食物を挟む時期に最も肩関節が内旋し,食物を口へ取り込む時期に最も肩関節が屈曲と外転し,頸部が伸展・右側屈・右回旋することがわかった.これらは,われわれが対象者の食事を評価し介入するための基礎知識になると考えられた.

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要旨:高齢者の生活時間におけるテレビ視聴の割合は余暇活動の大半を占め,長時間の視聴が健康に与える悪影響もわかっている.しかし,視聴時間帯と健康との関連についての検討はなされていない.本研究では,383名の在宅高齢者に対して基本チェックリストとテレビ視聴アンケートを実施し,フレイルの有無による2群と視聴時間および視聴時間帯との関連をみた.結果は,両者に視聴時間の差はみられなかった.しかし,総合基準と,運動分野およびうつ分野のフレイルの者は,健常者に比べて16:00〜18:00の視聴が多かった.

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要旨:本研究は,人工膝関節置換術(TKA)後患者における『活動日記』を併用した作業療法(OT)実践が,疼痛と疼痛の心理的要因および活動量に与える影響を,非ランダム化比較試験によって検討した.TKA後患者を対照群15名と日記群15名に分類した.測定指標はカナダ作業遂行測定(COPM),疼痛,破局的思考,不安と抑うつ,自己効力感,活動量を測定し,多重比較検定にて解析し,『活動日記』のコメントをKJ法にて分析した.結果,日記群はCOPM,不安,生活活動量に有意な改善を認め,KJ法ではOT開始時に「痛み」を中心としていたが,終了時は「達成感」へ変化した.TKA後患者に対する『活動日記』を併用したOT実践の有用性が示唆された.

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要旨:本研究の目的は,献立立案から取り組む集団調理プログラムが,地域在住女性高齢者の認知機能と自宅での調理頻度に及ぼす効果を調査することであった.対象は地域在住女性高齢者39名で,献立立案-調理群20名,調理実施群19名に週1度・6ヵ月間集団調理プログラムを実施し,介入前後で認知機能,心理機能,社会的活動量の変化を比較検討した.結果,認知機能項目で測定時期による主効果を認めたが,交互作用はなかった.また,調理頻度の変化も両群で有意差は示されなかった.今回の結果から,調理活動自体の認知機能改善への効果は示唆されたが,献立立案課題単独の認知機能・調理頻度への効果は乏しく,介入手法についてさらなる検討が必要である.

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要旨:急性期脳卒中患者5名に対し,実生活での非麻痺手の抑制を行わず,補助的手段を併用した上肢集中練習を1日2時間,平均3週間実施した.本研究では,麻痺手の機能と生活における使用の改善での有用性と安全性を検討した結果,集中練習が麻痺側上肢機能と実生活における麻痺手の使用頻度および質を有意に改善させることを確認した.加えて,急性期における集中練習介入期間中に有害事象は認めなかった.これらの結果は,急性期における短時間の集中練習のプロトコルが,意味のある方法である可能性を示唆した.しかしながら,急性期の集中練習の効果を実証するためには,今後,対照群をおいたランダム化比較試験による検証を行わなければならない.

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要旨:身体パラフレニア(somatoparaphrenia;以下,SP)は,妄想性の誤認や作話,身体の所有感が消失する現象であり,通常右半球の前頭頭頂葉の広範な病変で生じ,左半球損傷では珍しいとされる.今回,右上下肢の非所属感,他人帰属化,右上肢の擬人化といったSP症状を訴える50歳代女性を担当した.頭部MRIにて左視床に2cmの血腫と,SPECT画像にて左半球の広範囲に血流欠損を認めた.本事例のSP症状に対し,振動刺激とミラーセラピーの併用療法を行ったところ,非所属感の改善を認めることができた.右上下肢への振動刺激とミラーセラピーの併用療法により身体図式が再構築されたことが,SPの改善につながったのではないかと考える.

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要旨:本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者の社交不安症状に対する作業療法の効果を検討することである.ケースシリーズ研究で,3症例に対する6ヵ月間の作業療法介入前後の社交不安障害尺度得点,陽性・陰性症状評価尺度得点,日常生活場面での対人交流の状態を比較した.結果,6ヵ月間の作業療法介入によって,統合失調症患者の社交不安症状に改善がみられ,対象者全員に精神症状の改善も認められた.社交不安症状が中等度の患者は,重度の患者と比較し,より大きな改善がみられた.作業療法介入が,統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された.

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要旨:中等度の上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対し,急性期よりCI療法(量的練習,課題指向型練習,介入で獲得した機能を生活に転移するための戦略)と,電気刺激療法を併用した複合的な上肢集中練習を実施した.さらに,退院後,長期的効果を調査するため1年後の経過を追った.その結果,介入直後および介入から1年後に,麻痺側上肢機能と,実生活における麻痺手の使用の頻度および質の改善を認めた.したがって,我々はCI療法を急性期より実践することで,長期的にも好影響を及ぼす可能性を示唆した.ただし,今回の結果は一症例の経過に過ぎない.今後,多数の症例で同様の疑問を明らかにする必要がある.

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要旨:脳卒中後手指伸展が出現しない事例に,実生活の麻痺手使用を促す目的で,カペナースプリント改良型を用いたCI療法を行った.方法は,先行研究で報告されたスパイダースプリントを併用し,亜急性期からCI療法を実施した.しかし,事例が日常生活における装具の使用を拒否したため,カペナースプリント改良型を開発し,使用した.介入前後で,Fugl-Meyer Assessment,Wolf Motor Function Test,Motor Activity Logが臨床上意味のある最小変化量を超えて改善した.さらに,福祉用具満足度評価は,スパイダースプリントよりもカペナースプリント改良型が良好であった.カペナースプリント改良型は,CI療法において有用な装具である可能性を認めた.

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要旨:本研究では,実車評価時の運転可否結果と具体的な運転行動の関連性について,神経心理学的に分析を行った.当センターで,自動車教習所における実車評価を実施した脳血管障害者の運転適性について,群間比較を行った.結果,神経心理学的検査に有意な差は認められず,危険であると評価された運転行動の合計数のみが有意差を認め,適性なし群で有意に多かった(p=0.007).運転適性との関連から,カーブ走行時の走行位置,進路変更時の合図の有無,後退時のコースのとり方が運転可否結果に影響しており,実車評価時に着目すべき運転行動が明らかになった.運転行動は,神経心理学的検査のみではとらえにくい,複雑な活動であることが示唆された.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
38巻2号 (2019年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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