作業療法 31巻1号 (2012年2月)

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要旨:我々は,作業に焦点を当てた目標設定における意思決定を共有するためのiPad用アプリケーションである作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を開発した.ADOCでは,日常生活上の作業場面のイラスト94項目の中からクライエントにとって重要な作業をクライエントと作業療法士がそれぞれ選び,協業しながら目標設定を行う.今回,重度失語症のA氏に対してADOCを用いた結果,A氏が意味のある作業に気付き,作業に焦点を当てた実践へと展開するきっかけを作ることができた.この経験から,ADOCは意思疎通が困難なクライエントとの作業に焦点を当てた意思決定の共有を促進する有用なツールであることが示唆された.

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要旨:本研究の目的は,作業療法士によるSchool AMPSとCOPMを用いた評価と相談が保育園児の作業遂行の質と保育士に与える影響を調査することである.園での生活で気になるところがある4歳児クラスの園児8名の作業遂行をSchool AMPSとCOPMを用いて評価し,保育士と園児の問題を解決するための工夫を考えた.School AMPSは137(±26)日後に,COPMは214(±13)日後に再評価した.その結果,COPMの遂行・満足スコア,School AMPSの運動・プロセス能力測定値において,介入前後で有意差が認められた.保育士は園児の作業遂行特性を理解し,園児や状況に合わせて保育のやり方を変更できるようになった.

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要旨:本研究では,脳卒中片麻痺患者8名を対象とし,麻痺肢の橈側手根屈筋腱に対する振動誘発運動感覚錯覚(以下,VIM)課題中の脳活動を機能的近赤外分光装置を用いて測定し,感覚障害の重症度がVIMの知覚にどのように影響するかを検討した.その結果,感覚障害が軽度な症例では,両側または対側の一次感覚運動野を含む運動関連領域に有意な血流増加を認め,感覚障害が重度な症例では,同様の領域に有意な血流増加を認めなかった.感覚障害が軽度な症例では,非麻痺側でのVIMの再現が可能であり,一次感覚運動野を含む運動関連領域に有意な血流増加を認めたことから,麻痺肢におけるVIMの知覚が可能であると示唆された.

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要旨:目的は健常者と要介護高齢者の嚥下時間間隔を調べることである.本研究では,先行研究により開発した無意識・無拘束の嚥下回数自動検出システムを用いた.介護老人保健施設入所者等91名に頸部装着の咽喉マイクロフォンで嚥下音を検知し嚥下時間間隔を計測した.年齢と嚥下時間間隔の関係について,健常者群,部分介護者群,全介護者群で調べた結果,健常者群と全介護者群では相関が認められなかったものの,部分介護者群で相関係数0.50(p<0.05)の関係を示した.次に3群間で嚥下時間間隔を比較した結果,健常者群に比べ要介護高齢者群の嚥下時間間隔が延長し,要介護度の高い被験者ほど嚥下時間間隔が延長することが示唆された.

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要旨:ICFの「活動と参加」の評価を通して,要介護高齢者における生活機能低下の全体像を把握することを目的に調査を実施した.要介護高齢者672名を対象に,ICFの「活動と参加」の第2レベル73項目について,「実行状況」と「能力」の両面から評価点を評価し,Item Indexとしてそれぞれの困難度を求めた.「活動と参加」における領域ごとの比較では第5領域「セルフケア」のItem Indexが最も低くなり,「実行状況」で37.7,「能力」で34.4となった.逆に高くなったのは第6領域「家庭生活」であり,それぞれ89.6,77.7となった.本研究の結果は要介護高齢者の生活機能低下の現状と評価手段としてのICF活用の可能性を示すものである.

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要旨:上肢に失調症状を認めた神経変性疾患患者39名に,円模写軌跡測定値分析をおこなった.円模写軌跡測定値とバーセルインデックス(以下,BI)値の相関を調べて模写因子を確認し,重回帰分析によってBI値に関連する模写測定値を特定した.BI値への関連は,「ずれ標準偏差」が特異的であり,因子分析で得られたずれ標準偏差,描画速度平均値,プラス偏角標準偏差の要因を用いた重回帰式が得られ,適合度の良好な予測式が特定された.したがって,失調症状患者のBI値は模写円とのずれのばらつきに最も関連があり減少,模写速度が速いほど増加,外側にはみ出す角度のばらつきが大きいほど減少する関係が示唆された.

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要旨:デイケア参加者が活動中に感じる楽しさや不安といった感情を知るために,45名の対象者にフローモデルに基づく調査,分析を行った結果,①デイケアでの活動は様々な経験領域として利用者に経験されていた.②経験領域は『リラックス』と『不安』が多く,③『リラックス』は昼食などの日常的な活動に多くみられた,④経験しやすい経験領域は性別や年齢,介護度により異なった,⑤QOLとポジティブな経験領域の『喚起』との間に正の相関,ネガティブな経験領域の『不安』との間に負の相関が認められた.ポジティブな経験領域を増やしネガティブな経験領域を減らすためには活動内容や環境を利用者の「技術」に合わせて調整する必要があると考えられた.

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要旨:認知症に対するスクリーニング検査の条件や構成要素を把握することを目的に,過去11年間の国内論文33件のレビューを行った.認知症は早期の段階から,ADLよりも複雑なIADLに軽微ながらも障害が認められ,それらは遂行機能障害を反映しているものと考えられた.そのため行動上の変化を観察し,その背景にある認知機能に焦点をあてた検査が必要である.従来のスクリーニング検査で評価される記憶や言語,視空間認知,構成機能に加えて,IADLにおける遂行機能を評価することが,より早期の認知症スクリーニングには重要と考えられた.

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要旨:札幌市精神保健福祉センターで実施されている青年期広汎性発達障害者に対する支援活動に平成21年度の1年間,参与観察を行った.平成21年度の支援活動参加者30名を対象に後方視的観察研究を実施した.そのうち16名についてはグループ前後のSF-36v2,GHQ30,GAFの3スケールのデータが得られ,28名については転帰調査を実施することができた.自記式のSF-36v2,GHQ30,WHO/QOL26からは有意な変化は認められなかったものの,医師の評価であるGAFでは有意な改善が認められた.転帰調査においても自宅閉居者数が減るなど,グループ前後で参加者の生活の変化がうかがわれ,これらの支援が有効であると考えられた.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
31巻1号 (2012年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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