日本看護科学会誌 31巻1号 (2011年3月)

  • 文献概要を表示

 日本看護科学学会は2010年公益法人化という記念すべき年を迎え,順調に移行を遂げようとしています.学術学会の中では日本で2番目の公益法人化ということで,これまでの理事の皆様のご努力,ご貢献には深く敬服致します.私は,この記念すべき移行期に理事として学会の運営に関わらせていただき,また,日本看護科学学会の今後のありかたについてレポートをまとめるという他ではできないような貴重な経験をさせていただき感謝しています.

 将来構想委員会は委員長の他5人の委員によって成り立っています.理事会からは「若手」「成長株」「革新的アイデアを提案できる」「学会の将来について先が読める」といった委員の条件が出され,ハードルの高い中,宇佐美しおり氏(熊本大学),添田啓子氏(埼玉県立大学),中山和弘氏(聖路加看護大学),宮脇郁子氏(神戸大学),川崎優子氏(兵庫県立大学)に委員会に入っていただきました.委員会では力を合わせて本学会の現状を示すデータを集め,会員構成,動向,財務状況などを,さまざまな歴史的出来事と関連させて分析しました.同時に歴代の理事長数名にインタビューを行い,本学会の課題についてご意見を伺いました.その他に近隣の学会や,他学問分野の学会で本学会のようにアンブレラ学会として位置づいているいくつかの学会,外国の類似学会が打ち出している将来構想のレポート等を参考に,構想の内容を洗い出し,課題に沿って組み立てるといった作業を行いました.ほとんどの構想は歴代理事のご意見の中に反映されており,委員会はその裏付けとなる会員数や収入額や支出額などの数値を確認し,文章にしていくこととなりました.理事会で討議の時間をいただき,現理事達からもたくさんの意見をいただき,精錬作業においてもメールで素早く反応していただき,ご協力いただきました.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,母親への移行過程にある初妊婦がとらえる実母との関係性を評価するPrimigravida-Mother Relationship Scale(PMRS)を作成し,信頼性・妥当性を検討することである.先行研究のモデルから93項目の仮尺度を作成し,初妊婦800名を対象に質問紙調査を実施した.因子分析の結果,PMRSは「実母からのサポート」「実母との親密性」「実母に対する肯定感」「実母を介した母親像モデルの探求」「実母をモデルとした妊娠・分娩・育児準備」「実母からの自立性」「妊娠期適応」の7下位尺度,29項目で構成された.また下位尺度の内的一貫性による信頼性(α=0.61~0.86),2週間の間隔を経た再テスト信頼性による安定性(r=0.78~0.90)が確認された.さらに7下位尺度と母娘関係尺度,および「自立性」を除く6下位尺度と内的ワーキングモデル尺度との相関による併存妥当性,また既知グループである経妊婦および在日ブラジル人初妊婦との比較による構成概念妥当性が確認された.以上より,PMRSの信頼性と妥当性は確認され,これにより日本人初妊婦に特有な初妊婦と実母との関係性の定量的な評価が可能であるといえる.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:がん患者の治療法の意思決定に対する看護師の支援の実態とその影響要因を明らかにすることを目的とした.

 方法:2008年7月~9月に自記式質問紙調査を行った.「医師による治療法の説明に関わる看護援助」の項目と「看護師による情報提供」の項目について因子分析を行い,看護師の属性や病院分類による因子得点の差をt検定および一元配置の分散分析を用いて分析した.すべての分析はSPSSver15.0を使用し,有意水準を5%とした.

 結果:有効回答数は666名(71.6%)であった.因子分析の結果,「医師による治療法の説明に関わる看護援助」では4因子が抽出され,そのうち「説明内容の理解と精神的援助」は比較的良好に実施されていたが,「説明の場の調整」は十分に行われていなかった.「看護師による情報提供」では2因子が抽出され,「治療関連」の情報提供は良好に実施されていたが,「生活関連」の情報提供は十分に行われていなかった.因子得点は,いずれも卒業後の意思決定に関する学習や指導の有無により有意な差が認められた.

 結論:がん患者の治療法の意思決定支援を向上させるためには,医療機関で経験を積んだ後の自主的な学習だけでなく,がん看護に精通している先輩や上司の指導があることが有用であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究は,訪問看護師が行うグリーフケア,看護師が認識した家族介護者のアウトカム,看護師のアウトカムの構成概念を帰納的に明らかにすることを目的とし,各尺度を作成し,全国の訪問看護ステーションに勤務する看護師への郵送による自記式質問紙調査を実施した.

 質問紙の有効回答(率)は1442(76.1%)であった.グリーフケア尺度は3つに分かれ,療養生活開始から終末期のグリーフケア尺度は3因子構造16項目[α=0.93],臨終時のグリーフケア尺度は1因子構造5項目[α=0.66],看取り後のグリーフケアは3因子構造21項目[α=0.93]になった.グリーフケアの家族介護者のアウトカム尺度は4因子構造19項目[α=0.81],看護師のアウトカム尺度は4因子構造13項目[α=0.73]になった.

 看護師が行うグリーフケアは,療養生活開始から終末期のグリーフケア,臨終時のグリーフケア,看取り後のグリーフケアの3つが継続的に実施されることで,ケアの実施が相互に高まっていることが示された.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:救急・集中治療を要する重症意識障害患者に対する家族成員の認識を明らかにし,看護支援を探求すること.

 方法:本研究は,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的帰納的研究である.急性期治療終了後の状態がGCS10前後の意識障害患者の家族成員を参加者とし,理論的サンプリングによって8名得た.参加観察法,半構成的面接法により得られたデータを継続的比較分析した.

 結果:〈嘘と本当の交叉〉を基点とし,〈生きていてくれればいい〉〈もとに戻って欲しい〉〈もとには戻らないかもしれない〉〈変化の受け入れ〉の順に変化する4つの位相カテゴリーで構成された認識プロセスを見いだした.このプロセスの中心的現象は,《意識障害患者とのつながりに対する希望と落胆の共存状態》とカテゴリー化され,本研究のコアカテゴリーに位置づけられた.さらに家族成員は,[ゆらぎ][ささえ手][後押し]との相互作用を通して希望を持ちながら意識障害患者を引き受けていることが明らかとなった.

 結論:各位相における家族成員の認識を適切にとらえたうえで支持的に関わる重要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的はエルサルヴァドルの保健福祉省管轄の保健医療施設の看護継続教育の現状を記述し,看護継続教育の向上への今後の課題を明らかにすることである.第1から第3次医療レベルの8ヵ所の保健医療施設の教育担当者への半構成的面接で得られた教育プログラムの展開過程,展開上の影響要因と問題のデータについて内容分析を用いた.その結果,看護継続教育プログラムは診断・立案・実施・評価で展開されていた.影響要因は(1)保健福祉省の施策,(2)看護継続教育に関する運営体制,(3)保健医療施設のヘルスサービスの特性,(4)教育担当者の能力,(5)教育担当者の能力開発であった.問題は不十分な組織の管理体制,教育担当者の役割遂行の困難,プログラムによる業務への支障であった.これらの結果より,看護継続教育の向上への今後の課題は教育担当者の役割の明確化と能力開発,各組織の看護継続教育の管理・支援の体制,国レベルにおける看護継続教育の基準・体系化と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

 本稿は,終末期がん患者の家族の長期的経過の中での不安への対処を支える要因を明らかにすることを目的とし,余命についての説明を受けた家族8名を対象に,半構造的面接法によりデータ収集を行い,質的・帰納的に分析を行った.結果,余命についての説明直後の家族は【将来が予測できない不安】と【現実的な問題への不安】を持ち,【受け入れられない気持ちを安定させる努力】と【患者の延命の為の必死な努力】を行い不安の軽減を図っていた.しかし厳しい現実への直面時期において【将来の具体的な問題への不安】と【余命の過ごし方への不安】が出現し,【看病を継続できるように自分を保つ努力】と【患者のQOLを保つ努力】を行っていた.これらを支える要因として【信頼でき家族への配慮がある医療者の存在】【気持ちを理解し協力してくれる他者の存在】【患者との絆】【自分自身の時間がもて気分転換が出来ること】【看病経験による自信】【将来の見通し】が明らかになった.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:在宅高齢者終末期の時期別期間とこの間に実施された訪問看護の頻度と体制について,がんとがん以外の事例を比較しつつ明らかにする.

 方法:「良い」看護を提供していると判断される訪問看護ステーションの看護師31名から65歳以上のがん・がん以外の事例1件ずつ聴取し,終末期期間を分け「開始期」「維持期」「悪化期」「臨死期」について分析した.各期の期間・訪問頻度等を集計しがんとがん以外の事例を統計的に比較検討した.

 結果:がん以外の事例はがん事例に比べ開始期と悪化期が有意に長く,長さは多様だった.訪問頻度はがん事例では臨死期から高く,がん以外の事例は悪化期から高くなった.緊急訪問はがん以外の事例の臨死期に約半数で実施されていた.

 結論:がんとがん以外の事例で異なる経過と訪問看護の提供状況が見られ,事例毎に適切な看護が提供できるような制度上の工夫が看護師の技術向上とともに求められる.

  • 文献概要を表示

要旨

 目的:本研究の目的は,治療過程にある進行肺がん患者が症状体験に伴って示す情緒的反応の本質を明らかにすることである.

 方法:がん治療過程にあり,調査時に何らかの自覚症状を有するが全身状態が安定している進行肺がん患者10名を対象に半構成的面接によりデータを得た.関係する語り部分をコード化し抽象化を進め,主題・本質を導き出す質的記述的方法により分析した.

 結果:症状体験に伴う情緒的反応は14の主題に集約され,【がん悪化への恐れ】【がんであることの自覚】【がん治癒への懇願】などの7の情緒的反応の本質が導き出された.

 結論:症状体験に伴う情緒的反応の根底には,がんにまつわる病苦や人間の本質に関わる苦痛が内在しているため,症状理解においては全体性をとらえる視点を持ち身体的苦痛の背後にある情緒的反応にも目を向けることが必要であること,さらに症状緩和においては人間の本質にまで及んだ内面的苦痛や病苦に対する介入が重要であるという示唆を得た.

基本情報

02875330.31.1.jpg
日本看護科学会誌
31巻1号 (2011年3月)
電子版ISSN:2185-8888 印刷版ISSN:0287-5330 日本看護科学学会

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)