看護教育 23巻12号 (1982年12月発行)

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特集　POS実践の新たな展開

特集にあたって岡安　大仁 23巻12号 , 1982年12月 , pp.729

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　POSの創始者であるL. L. Weedは，その著書“Medical records, medical education, and patient care”（1969）の序文の中で，次のように述べている．

　‘診療記録は問題指向型であるばかりでなく，精密で説得力のある完全なものであり，本質をそらすような冗漫，皮相，断片的であってはならない……それはコンピュータを適用できるものだが，コンピュータを不可欠なものとはせず，感受性に富む経験をつんだ医師の表現に自由を保証し，同時に主観が強すぎてコミュニケーションを阻害するような記録の個人化を防止する様式と秩序を持つものでなくてはならない’

Ⅰ．特別講演

外来透析室におけるPOS記録とコンピュータ利用古山　智也子 , 近藤　和子 , 和田　孝雄 23巻12号 , 1982年12月 , pp.732-736

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はじめに

　私たちは，この1年間にわたって慶応義塾大学病院外来透析センターにおいて，看護面におけるコンピュータ導入を試みてきた．今回は，そのコンピュータをPOSの面で，いかに利用すべきかについて検討したので紹介する．

POSでのマイコン利用の問題点和田　孝雄 23巻12号 , 1982年12月 , pp.739-762

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コンピュータとはいったい何なのか

コンピュータの5大要素

　コンピュータとはいったい何なのか，ということからお話をしてみたいと思います．

　まず，もし仮に皆さんがご自分でコンピュータをお作りになるとした場合，どういう要素を組み込めばいいのかということを考えてみます．

Ⅱ．経験発表

リハビリテーションセンターにおけるPOS利用の経験村上　信 23巻12号 , 1982年12月 , pp.763-766

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はじめに

　リハビリテーション医療の特徴として，1人の患者さんにかかわる専門職スタッフの数の多さをあげることができる．そこには，医師のみが治療的なかかわりをもつといった世界はすでに無く，例えばリハビリテーション・ナース，理学療法士，作業療法士，言語療法士，義肢装具士，ソーシャルワーカーなどを含む専門職スタッフによるチーム医療の世界がある．そして，リハビリテーション医療では各専門職スタッフがその能力を最大限発揮するのみでは不十分で，さらにチームとしての機能が十分に発揮されることが成功の鍵といっても過言ではない．しかし，チーム医療ではややもすると各専門職が各々の専門分野にのみ注目し，患者さんの理解がモザイク的になる危険も高い．

　これらを考えるとき，我々はチーム間コミュニケーションのとり方がきわめて重要との判断から，コミュニケーションの場を病棟カルテ，すなわち記録におくこととし，幾分かのアレンジを加えてはあるがPOSを全センター的に導入してみたので，その経験を報告する．

臨床看護学実習へのPOS導入・1　＜看護過程＞を重視した受け持ち患者記録の作成中木　高夫 , 宮脇　美保子 , 太田　久佐子 , 阪口　直子 , 玄田　公子 , 端　章恵 , 筒井　裕子 , 松本　富貴子 , 藤腹　明子 , 福本　美鈴 23巻12号 , 1982年12月 , pp.769-775

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はじめに

　POSは近年，新設医科大学を中心として臨床の場に着実に根づこうとしている．今，なぜPOSなのか．それは，従来ないがしろにされていた医療を行う上での思考過程が整備されシステム化されているからだと思われる．看護教育においては，学生に対し‘看護過程’を教授し，臨床実習で展開させるわけであるが，その際，ただ単に知識を与えるだけでなく，科学的・論理的なものの見方・考え方と，その効果的な記録の方法について教えるようにしている．

　今回，私たちはこの看護過程をより科学的・論理的に推し進めるために，臨床実習記録にPOSを導入した学生のための記録の作成に取り組んだので報告する．

臨床看護学実習へのPOS導入・2　成人看護学内科実習にPOS受け持ち患者記録を使用して中木　高夫 , 筒井　裕子 , 玄田　公子 , 福本　美鈴 , 藤腹　明子 , 松本　富貴子 , 端　章恵 , 太田　久佐子 , 宮脇　美保子 , 阪口　直子 23巻12号 , 1982年12月 , pp.777-779

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はじめに

　臨床実習を効果的に行うために，これまでも様々な工夫がされ，報告されている．POSを用いたものについては，山下^1）によって，POSを臨床実習に応用するための演習カリキュラムが発表されている．

　本学における成人看護学内科実習は2週間だけであるので，特に実習初期に十分な患者把握をすることが必要である．また，その患者の問題を解決するためには，適切な情報を意図的に収集^2）することが要求される．これまでの記録は，情報収集のための基礎資料として項目（表1）は与えていたが，大枠であり，情報収集が系統的に行われていなかったため，抽出された問題に片寄りがみられた．また，学生の観察能力により情報の内容に差が出ていた．

Ⅲ．ワークショップ

プロブレムリスト・データベース篠田　知璋 23巻12号 , 1982年12月 , pp.781-782

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　昭和57年2月6日に東京で開かれた第4回POS研究会におけるワークショップの一部，プロブレムリストとデータベースのセッションをもとにして，この問題を解説する．

　セッションに参加された方々は約25名，リーダーは筑波大学の河野一郎氏，川崎医科大学の中島行正氏（両氏はそれぞれ医学生にPOSの教育をしておられる），滋賀県立総合保健専門学校の宮脇美保子氏，そして私の4名であった．

イニシアルプラン林　茂 23巻12号 , 1982年12月 , pp.783-784

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　このグループは30余名の参加があったが，POSを実際に手掛けているナースの方が大部分であった．そこで，症例を1つ提示してイニシアルプランを立ててみることにした．

　提示された症例は，腎炎の既往のある20歳の家庭の主婦で，妊娠28週に突然，血尿，蛋白尿，高血圧，全身浮腫を来し，急激に子宮内胎児死亡を起こした例である．既往歴，現病歴，診察所見，検査所見をコピーして参加者に配布し，それをもとに討議をすすめた．

オーディット羽白　清 23巻12号 , 1982年12月 , pp.784-785

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　Weedは，かつてオーディットを伴わないPOMRを，よく調律してあるが弾き手や聴衆のいないピアノに例えた．確かにオーディットはPOSに不可欠であるが，我が国の現状ではオーディットの態勢まで整えている施設は少ないようである．POSの実地の展開において何がオーディットの実施を妨げているのであろうか．

　第4回POS研究会のオーディットに関するワークショップには，医師4名，ナース18名が参加し，提示症例のデータベース，プロブレムリスト，看護計画の各過程についてオーディットの作業を行った．ここでは紙幅の関係上，その中で明らかになったオーディット実施の問題点とその対策について略述する．

フローシート・ディスチャージサマリー森　忠三 23巻12号 , 1982年12月 , pp.786-787

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フローシート，ディスチャージサマリーの解説

〔フローシート〕

　経過によって変化してゆく患者の診察所見・検査所見と治療との関係を，一見してわかるようにまとめた経過表・経過図をフローシートと呼ぶ．体温表も一種のフローシートである．フローシートの上手な作り方は，その患者の主な問題（＃）と関連性の深い症状・診察所見・検査所見・治療を取り上げて作るのがよい．

POSの初歩的解説岩崎　栄 23巻12号 , 1982年12月 , pp.788-789

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なぜPOSか

　患者の多くは，病名をつけられると安心する．いや安心するように，多くのこれまでの医師たちにより習慣づけられてきたのである．その患者にとって何ひとつ問題が解決されていないというのに……．

　‘あなたは高血圧ですよ’‘ああそうですか，だから頭が痛いんですね’とくる．果たしてそうだろうか．頭痛が高血圧でくるとは，だれが信じこませたのであろうか．高血圧の大部分の患者では自覚症がないのが普通なのである．頭痛などというものは，血圧の程度とは関連がない．そうであるのに，持続性高血圧という確認もないままに不用意に降圧剤が与えられたり，家庭での血圧は正常なのに降圧剤が与えられたりする．

Ⅳ．総括討論

POS実践の新たな展開細田　四郎 23巻12号 , 1982年12月 , pp.791-792

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　POS研究会も回を重ね，第4回を迎えた今回は，‘POS実践の新たな展開’をテーマとして，昭和57年2月7日午前9時30分より午後5時近くまで開催され，多数の参加者の熱心な討議に，短い1日が過ぎた．

　まず最初，メイン・サブジェクトである講演は慶応義塾大学医学部講師の和田孝雄氏による‘POSでのマイコン利用の問題点’であった．氏は，わかりやすいスライドを用いて，思わずひき込まれるような魅力的な話しぶりで話しを進められ，コンピュータというものに全く予備知識のない参加者にとっても，多少身近な存在となったことはたいへんありがたかった．