medicina 56巻5号 (2019年4月)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

矢吹 拓
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 東京大学の故 冲中重雄名誉教授が,1963年退官時の最終発表で,自身の臨床診断と病理解剖の結果を比較して,教授在任中の誤診率が「14.2%」だったと発表したのは有名なエピソードです.この数字が高いか低いかは別にして,このような視点で日々診療していた先生がいらっしゃったということに大変感銘を受けます.

 私達の日常診療はどうでしょうか? 自らの診療内容を振り返る機会はあるでしょうか? 臨床医として仕事をするなかで,適切な診断やマネジメントができるように,日々努力していくことはもちろん重要です.でも,実際には『ドクター G』のようなファインプレイばかりが続くものではなく,時に診断を誤ったり,診断にたどり着けなかったり,診断が遅れたり,といったことが起こるのではないかと思います.

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日常診療においてすべての患者の診断が適切になされることが期待されますが,実際の医療現場では常にそうとは限りません.診断のプロセスにおいてさまざまなエラーが生じ,診断の遅れや誤りが治療や患者アウトカムに影響することもあります.今回は診断エラーの全体像やエラーに関係する認知バイアスについて議論を深めつつ,最終的にどのように診断エラーを克服していくか,エキスパートの先生方と熱くディスカッションしていきたいと思います.(矢吹)

症例問題

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診療背景 総合病院の救急外来で診察中.最近,勉強会で片頭痛の勉強をして頭痛診療が楽しくなってきている.

症例 32歳女性.

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症例 63歳男性.  主訴 意識障害,発熱.

現病歴 アルコール性肝硬変で通院中.受診5日前に定期受診した際に37.9℃の発熱あり.血液検査では異常なく,発熱精査を勧めたが「入院はしたくない.家で様子をみたい」と強く拒否したため帰宅とした.前日までは自力でトイレに行けていた.受診当日,37.3℃の発熱,意識障害,尿失禁があり救急搬送された.娘の話では部屋に酒の空き缶があったとのこと.

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症例 87歳女性.

主訴 体が左に傾く.

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診療背景 300床規模の市中病院の総合内科.初診外来で他科からの紹介患者を診察することになった.

症例 66歳女性.  主訴 呼吸困難.

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診療背景 連休明けの初診外来は大変混雑していた.そのため,本日は4人の研修医が初診外来を担当していたが,指導医は1人しかいなかった.

症例 62歳男性. 主訴 右背部痛.

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診療背景 コントロール不良の2型糖尿病で他院通院中.

症例 57歳男性.  主訴 悪心,吐血.

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診療背景 平日日中の内科初診外来.

症例 75歳女性.

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診療背景 日曜当直で深夜に入院した患者.診察時,医師は疲れ果てていたが,血液ガスのカリウム(K)値を見て目が覚めた.

症例 87歳男性.  主訴 四肢脱力.

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診療背景 紹介受診された患者の初診外来.

症例 70歳女性.  来院理由 貧血の精査.

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診療背景 当院循環器内科より総合内科に診療依頼を受けた症例.

症例 85歳女性.

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診療背景 患者の受診は1月下旬で,ノロウイルスによる感染性胃腸炎が周囲で流行していた.

症例 80歳女性.  主訴 悪心・嘔吐.

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診療背景 複数医師が働く都市部の中規模診療所.2つの診察室があり,自身は第1診察室,パート医師が第2診察室で,2人体制で一般外来を担当していた.

症例 68歳女性.

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診療背景 100床の病院で勤務する内科医で,土曜の当直勤務中.夜間は忙しく仮眠がとれなかったが,午前8時30分の当直明けに病棟回診をして早めに帰宅できる状況である.

症例 85歳女性.  主訴 転倒後の左足痛.

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診療背景 100床程度の地域の総合病院.内科医として,金曜日の午前・午後外来を担当している.その日は朝から,初診・再診を含め患者が殺到した.昼食を食べ損ね,空腹である.今晩は,遠方から来る友人と久しぶりに食事をする予定.外来終了のめどがついた17時前,看護師からいつも診ている患者が,注射をしてほしいと来院していることを聞いた.早速,診察を開始した.

症例 81歳男性.  主訴 ふらふらする.

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診療背景 ある地方都市の新興住宅地にある内科クリニック(無床診療所).猛暑日が続く夏のある日,朝から軽症の熱中症と思われる2名の患者さんに点滴をしたところだった.午後は往診の予定がぎっしり入っており,忙しくなりそうだ.午前外来の最後の患者さんが,ぐったりとして診察室に入ってきた.

症例 42歳男性.

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症例 76歳男性.

主訴 全身倦怠感.

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診療背景 ある地域の病院で夜間救急当直をしていた.救急車だけでなく,ウォークインの患者もたくさん来る.

症例 22歳女性.

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診療背景 日勤夜勤問わずER型の救急外来を行っている病院.本症例は夜勤帯未明での出来事である.

症例 71歳女性.

Question19 尿が出ない? 清水 郁夫
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診療背景 救急外来が非常に混んでいた.

症例 48歳女性.

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診療背景 総合病院の血液内科専門医(卒後8年目)が対応した.

症例 74歳男性.

Question21 薬剤性ですね! 山本 祐
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診療背景 診療所午前外来の最終受付患者.受診は7月で,インフルエンザは非流行期である.

症例 17歳女性.

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症例 50代男性.

現病歴 受診1週間前から左第5指の疼痛を自覚した.配達業をしており,仕事で負荷がかかったと思い,医療機関は受診しなかった.第5指を使用しない形で仕事を行うも症状の改善が得られず,鎮痛薬処方希望で当院をX年5月に受診した.

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診療背景 卒後5年目の糖尿病内科医が担当した症例.

症例 75歳男性.

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診療背景 総合病院の呼吸器内科における症例.

症例 63歳女性.  主訴 体動時痛.

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症例 72歳男性.

転棟理由 ステロイド治療後の血糖管理依頼があり,総合内科に転棟.

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診療背景 群馬県の山間部に位置する中規模総合病院.初診外来は総合診療科の医師を中心に,一部パート医の協力で運営している.

症例 52歳女性.

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症例 66歳男性.

主訴 発熱・悪寒戦慄.

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診療背景 総合病院総合診療科における在宅診療部門立ち上げの初年度に遭遇した症例.

症例 60代女性.

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診療背景 山間地域の総合病院.平日夜間救急外来をウォークインで受診.内科医・外科医・研修医各1名が勤務中.検査技師・放射線技師当直あり.

症例 70歳女性.  主訴 左胸部不快感,呼吸困難感.

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診療背景 連休初日,外科と内科医師1名ずつで救急外来と病棟の急変に対応していた.

症例 81歳男性.  主訴 全身痛,食欲不振.

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診療背景 夜勤帯医師は朝4時に来た救急車2台の対応を終え,6時に来た1台の対応中だった.8時に引き継ぎ患者がいれば申し送りをするルールになっている.

症例 42歳男性.

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症例 70代男性.

主訴 血便.

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診療背景 二次救急を担う地域中核病院で1人当直中.日付は0時を過ぎてもまだ救急車が途切れる様子はない.そんな最中,患者が冷汗をかきながら飛び込んできた.

症例 45歳男性.

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診療背景 数百床レベルの急性期病院の救急外来,コンサルトはオンコールも含めればほぼすべての科で可能.

症例 65歳男性.

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診療背景 春頃の日中,比較的落ち着いた救急外来.

症例 42歳女性.

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診療背景 担当医は夜勤中で,救急外来で複数患者の対応に追われていた.すでに入院が決定している患者が2人いながら,画像検査待ちの患者,診察待ちのwalk-inの患者,そしてこれから来る救急患者の対応も必要だった.もう一人同僚がいるが同様に忙しそうにしている.

症例 31歳女性.

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診療背景 都会の600床の急性期病院ER.平日の昼まで混雑していた.

症例 50歳男性.  主訴 心窩部痛.

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症例 10歳男児.

主訴 左下腹部痛.

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症例 72歳男性.

主訴 発熱・両下肢のしびれ.

Question40 胃が痛い…… 山本 祐
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診療背景 90床の病院,一般内科の午前外来で診療中.生活習慣病患者が受診者の大半である.

症例 45歳男性.  主訴 心窩部痛.

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診療背景 休日の受診で,外勤の当直医が対応していた.

症例 85歳女性.

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症例 76歳女性.  主訴 一過性意識消失,呼吸困難.

現病歴 3年前から繰り返すめまいのため,当院通院中.2年前に外出先で意識消失し,失神として他院に救急搬送された.その後,当院で心電図・頭部CT・MRI・脳波検査を施行したが,失神の原因は不明であった.5カ月前から労作時の息切れ,3カ月前から食欲不振,体重減少が出現.2日前の朝,起床後に数m歩いたところで段々足が重くなり意識消失した.数分で意識は回復したが,同時期から安静時の呼吸困難が出現し徐々に増悪傾向となり,日常生活に支障をきたすようになったため,初診外来を受診した.Holter心電図や脳波検査を施行し,11日後に再診したが,呼吸困難は改善せず,SpO2低下もあり精査加療目的に同日入院となった.review of system(ROS)(+):労作時の息切れ,失禁(意識消失時),体重減少(3カ月で3kg減少),食欲不振,倦怠感.ROS(−):胸痛,動悸,喘鳴,腹痛,悪心・嘔吐,下痢,便秘,不眠.

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症例 43歳女性.

主訴 全身倦怠感,発熱.

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診療背景 担当医は地域で流行中のツツガムシ病を経験した直後であった.

症例 66歳男性.  主訴 全身倦怠感.

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診療背景 150床の1・2次救急を担当している病院で1人当直業務中の午後8時.検体検査と放射線検査は宅直技師へ連絡し,来院してもらってから実施可能.

症例 39歳女性.  主訴 頭痛,悪心・嘔吐.

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診療背景 300床クラスの中小規模病院.午前の内科外来は2名医師で担当しているが,1名は再診患者の診察に当たっており,新患と救急車はもう1名のみで対応していた.新患外来が非常に忙しく,ちょうど背部痛で救急搬送された患者を尿路結石症と診断したところであった.

症例 89歳男性.  主訴 下背部痛.

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診療背景 総合診療科初診外来での症例.

症例 68歳男性.

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症例 47歳女性.  主訴 意識障害.

現病歴 拒食症,アルコール依存症で入院歴のある中年女性.1カ月ほど前から下痢症状がみられる.昨日までは体動可能で本日朝も会話は可能であった.夕方夫が帰宅した際にベッド脇でうつぶせ状態になっているところを発見され,呼びかけにも反応がないため救急要請となった.救急隊接触時Japan Coma Scale(JCS)200であった.

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診療背景 チームで20〜30人の患者を抱えており,忙しい状況であった.

症例 67歳男性.

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診療背景 インフルエンザ流行中の12月30日.朝から夜までインフルエンザ患者の診察を続けてもう20人は診断してきた.現場は大混雑している.

症例 36歳女性.

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診療背景 120床の地域の病院.夜にER外来で診療していた.

症例 92歳女性.

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症例 66歳女性.

主訴 右側腹部〜腰部にかけての痛み.

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症例 81歳男性.  主訴 呼吸困難.

現病歴 患者は,当院整形外科で関節リウマチ(RA)治療のため,ゴリムマブ皮下注射と下記内服薬により管理されていた.入院17日前にRAの増悪と診断され,ゴリムマブが増量となっていた.入院数日前から発熱と呼吸困難が出現し当科を受診された.CT検査から両側肺炎,両側少量胸水および大量腹水と診断し,精査加療目的で当科入院とした.

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診療背景 先月行われた健康診断・がん検診の結果が受診者に戻されたばかりで,本日の外来は健診・検診後の精査目的の患者が多数来院していた.また,連休明けのため初診患者でもあふれていた.

症例 64歳男性.

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症例 34歳男性.

主訴 発熱・皮疹.

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診療背景 ある休日当直の勤務中.軽症患者を数人診察した後での症例.

症例 58歳女性.

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診療背景

・800床の県内最大の病院の救命救急センター勤務の卒後4年目.

・初期研修医1,2年目とチームで日勤の救急外来に対応している(基本的に初期研修医に初療をしてもらい相談を受け,1人で初期対応が困難な場合にはともに診療を行う方針).

・チームで他に3名の患者を診察中であった.

・診察していた初期研修医2年目から下記のコンサルトを受けた.

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診療背景 季節は11月.後期研修医となってしばらく経ち,救急診療にも自信がついてきた頃のお話.この日は救命救急センターのER当直で,多くの軽症を診察しつつ,糖尿病性ケトアシドーシスや心筋梗塞などの重症例を的確に入院させていた.帰すものはさっさと帰し,入院させるべきは入院させる….「かっこいいぞ,俺…ふふ…」と悦に入りつつ,さすがに疲れてきた朝の4時.

症例 26歳男性.  主訴 左下腹部痛.

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診療背景 最近,若手医師に教育するために胸痛を勉強しなおすことがあり,筋骨格系の胸痛やnon-cardiac chest painに関して学んでいた.勤務状況としては日勤の終わり際で,昼〜午後にかけての混雑でやや消耗しながらも,救急外来は比較的落ち着いてきた頃だった.

症例 62歳女性.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・12

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 前回は,Barréの下肢試験とMingazziniの下肢試験(いわゆるMingazzini徴候),下肢外旋徴候を勉強しました.他にも有用な下肢麻痺を検出するテクニックがあります.麻痺を診るときには,テストや検査によっては偽陽性や偽陰性となることもあります.そのため,いくつかの検査を組み合わせて麻痺を検出しましょう.今回は,bed cycling test,knee up test,pyramidal weaknessを紹介します.

連載 物忘れ外来から学ぶ現場のコツ 認知症患者の診かた・11

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ポイント

認知機能スクリーニング検査としてはMoCAが最適です.総合点だけでなく各設問に対する回答の内容に注意します.

連載 母性内科の「め」 妊婦・授乳婦さんのケアと薬の使い方・10

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症例

 26歳のEさんはこのたび自然妊娠で双子を授かり,今日で妊娠35週0日になります.今朝,洗顔後に右眼にコンタクトレンズを入れると,ごろごろして収まりが悪い感じがありました.ときどきそういうことがあるので特に気にしていなかったのですが,朝食のときに夫から「口の右側からお茶がこぼれている」と言われました.鏡で見てみると,顔の右半分が動かしにくくなっているようで,歯磨き後の口すすぎができずに水が漏れてしまいました.すぐにかかりつけの総合病院の産婦人科を受診したところ,内科での診察を勧められ,内科外来を受診しました.

Eさん:「先生,顔が動かしにくいんです」

連載 目でみるトレーニング

連載 心電図から身体所見を推測する・11

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 心電図には異常が起きている部位に関する位置情報が隠れている可能性がある.今回は虚血性心疾患の心電図でみられるST変化や虚血後の心室期外収縮の所見からその責任部位を探っていきたい.これらの心電図所見から責任部位を推測することにより,その治療法を考えるのに役立つことがある.

連載 医師のためのビジネススキル・11

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事例

 ある日の午後,その日最後の訪問診療を終えてクリニックに戻った四つ葉医師は,開業から1年半の間のさまざまな出来事を思い返していた.ふと机の上に目をやると,回収されたばかりの患者さんおよび従業員満足度調査票が置かれていた.そのなかには患者さんから感謝の言葉として,「在宅医療を受けるのは初めてだったが,丁寧に説明してくれて不安が解消された」「夜お腹が痛い時,先生がすぐ来てくれて本当に助かった」といった声が記されている.

 その一方で,「往診を期待したが,先生が忙しいようで,電話でしか話せなかった」「診察時にはもっと話を聞いてほしい」「もう少し相談しやすい先生に担当してほしい」といった改善要望も数多く書かれていた.

連載 ストレスと病気のやさしい内科学 診療の幅が広がる心療内科の小ワザ集・6

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 今回は,難治性のめまいの原因にもなりうる,Ménière病を取り上げます.

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 この本を手に取ったときの感想はどうだろうか.なんか“懐かしい”感じがした.これは本書のスタイルなのだろうか.思い返せば,メディカル・サイエンス・インターナショナル,村川先生の『循環器治療薬ファイル』のスタイルだ.何かブレないものを感じる.数多くの症例を提示しているが,すべてにおいて,現病歴から・心電図から・そしてその他の臨床検査の結果から“問いかけている”.この“ブレない”姿勢は本当に見事だと感じる.何より,すべての症例においてこれでもかというぐらい細かい記述がある.本書の背後には,ベッドサイドで戦う臨床医の姿しか見えない.

 本書の特徴としては,上に述べた懐かしい感じもそうだが,何より,この「問いかける」作業にある.『症例から問いかけるCCUカンファレンス』なので,ぱっとタイトルだけみれば,最近かなり多くあるようなCCUのカンファレンス実況中継のようなものを想像するかもしれないが,私の読んだ感じは全く違う(筆者の先生のイメージとは違うかもしれない).この本で問いかけているのは“自分”だ.実際の実臨床の現場においても,この「問いかける」作業というのは,実際にカンファレンスの現場のみで実践されているというよりは,患者に接した“自ら”に“問いかけている”のである.患者の一人ひとりで,一つの所見が出るごとに,それぞれの背景を考察する.これは外来患者であろうが,入院患者であろうが,すべての患者で実践すべき「問い」である.もし,少し循環器診療になれてきた先生が忙しい毎日で仕事がルーチン作業化してしまっているようであれば,忘れてしまいがちなこの点を是非強調しておきたい.昨今のガイドラインや,Take home messageのみで抽象化されてしまったものとは一線を画す,極めて具体的な思考回路がここに凝集されていると感じる.

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 救急医療では,緊急性に適切に対応すること,すなわちタイムリーに診療を開始することが重要です.しかし,救急に携わるスタッフが救急患者の診療を開始した段階では,緊急性の程度ばかりでなく罹患臓器も不明であり,いずれの病態の緊急性にも対応できる知識と技術が必要になります.急病,外傷,中毒など,原因や罹患臓器の種類にかかわらず,全ての緊急性に対応する診療能力が重要です.

 正確な診断よりも病態に対する蘇生・治療が優先されるショックや呼吸不全患者への対応,救急患者に多く見られる症候からの時間を意識した考え方と対応,そのための検査や治療手技,さらに社会的事項や各種スコアリングなど,救急に携わるスタッフが知っておくべき知識と情報は多岐にわたります.そして,限られた時間と資源という大きな制約を伴う状況でこれらを使いこなし,判断と確実な治療につなげなければなりません.この「限られた時間」「限定された資源」という制約が,救急診療が一般診療と著しく異なる点です.また,この相違こそが救急たるゆえんであり,醍醐味ですらあります.

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medicina
56巻5号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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