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この本を手に取ったときの感想はどうだろうか.なんか“懐かしい”感じがした.これは本書のスタイルなのだろうか.思い返せば,メディカル・サイエンス・インターナショナル,村川先生の『循環器治療薬ファイル』のスタイルだ.何かブレないものを感じる.数多くの症例を提示しているが,すべてにおいて,現病歴から・心電図から・そしてその他の臨床検査の結果から“問いかけている”.この“ブレない”姿勢は本当に見事だと感じる.何より,すべての症例においてこれでもかというぐらい細かい記述がある.本書の背後には,ベッドサイドで戦う臨床医の姿しか見えない.
本書の特徴としては,上に述べた懐かしい感じもそうだが,何より,この「問いかける」作業にある.『症例から問いかけるCCUカンファレンス』なので,ぱっとタイトルだけみれば,最近かなり多くあるようなCCUのカンファレンス実況中継のようなものを想像するかもしれないが,私の読んだ感じは全く違う(筆者の先生のイメージとは違うかもしれない).この本で問いかけているのは“自分”だ.実際の実臨床の現場においても,この「問いかける」作業というのは,実際にカンファレンスの現場のみで実践されているというよりは,患者に接した“自ら”に“問いかけている”のである.患者の一人ひとりで,一つの所見が出るごとに,それぞれの背景を考察する.これは外来患者であろうが,入院患者であろうが,すべての患者で実践すべき「問い」である.もし,少し循環器診療になれてきた先生が忙しい毎日で仕事がルーチン作業化してしまっているようであれば,忘れてしまいがちなこの点を是非強調しておきたい.昨今のガイドラインや,Take home messageのみで抽象化されてしまったものとは一線を画す,極めて具体的な思考回路がここに凝集されていると感じる.
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