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特集 精神分析はたのしい――人文知との邂逅・民主化の未来
生きられなかった自己を生きる――触れ難い心の領域をめぐる交流
吉沢 伸一
1
1白百合女子大学人間総合学部発達心理学科
pp.94-101
発行日 2026年8月20日
Published Date 2026/8/20
DOI https://doi.org/10.69291/cp26070094
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1 はじめに
精神分析的心理療法が導入される目的はクライエントの状態やニーズによりさまざまではあるが,そのプロセスにおいては「生きられなかった自己を生きる」ことをめぐる交流が内包されると私は考えている。幼少期から主体的な自己のありようが許容されない環境に身を置かざるを得なかった場合,何らかのきっかけで心身の不調をきたし,その課題に取り組む必要に迫られる。生きられなかった自己部分は,いわば死んだ自己,あるいは死にかけている自己であり,そこを保護するための防衛組織が発達し,それがパーソナリティのありように強く影響を与えている。その自己部分は「触れ難い心の領域」であり,耐え難い心の痛みや混乱が伴い,破壊的な防衛様式が不随するために,うかつに手を出すことは難しく,セラピストは関わりを模索しつづけることになる。
本稿では,この領域をめぐる精神分析的心理療法プロセスを描き出すことを目的としたい。なお,事例素材は,複数の事例経験を複合した架空事例である。

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