コーヒーブレイク
忘れ難きひと・ところ
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.268
発行日 2000年3月15日
Published Date 2000/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904332
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和30年代,私がサンフランシスコのカリフォルニア大学代謝研究所にいたころ,準教授はDi Raimondoという大男で,身体ばかりでなく心も大きな男で私達はBig Diと愛称した.ステロイド研究者で,コルチコイドの日内変動や投与法などで斬新な研究を発表し有名であった.その一つのモルモット実験を私は担当させられたが,哲学的ともいえる彼の雰囲気とアイデアはすばらしかった.帰国するときに彼が友人達と署名して1冊の本を贈ってくれたが,冒頭に書いてあった"You can leave it, but it never leaves you"(貴君は去ることができてもサンフランシスコは貴君を去らない)という言葉は今でも印象的である.
帰国後私は検査部を創設する破目になり,米国検査室視察に訪れたとき,彼は既に市内に内科のオフィスを構えていた.検査についてのアドバイスとして彼曰く「米国の検査室は大きくなりオートマチックになればなるほど医師のlaboratorydiagnosisを理解することがますます遠くなりつつある.大学病院や検査センターを視察する前に小さい病院の検査室をよく見て,それが医療に果たす役割を考えたほうがいい」と.ときがたって最近のわが国の臨床検査を考えるとき,彼のこの言葉はまことに暗示的と思われてならない.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.