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どんな薬?
フルオロウラシル(5-FU)は1956年に合成された抗がん薬で,米国では1962年,日本では1967年に承認され,製造販売が始まりました.すでに50年以上経過しており,ジェネリック医薬品や5-FUの効果を強化するためのプロドラッグも複数開発されています.5-FUは現在でも消化器がんを中心に広く活用されていますが,過去には抗ウイルス薬との併用による重篤な副作用の出現によって,死亡事例が報告された薬害事件もありました1-3).
1993年に帯状疱疹を効能として抗ウイルス薬のソリブジンが日本で開発され,発売になりました.ソリブジンに対する期待は大きく,承認後短期間で多くの医療機関に納入されました.発売後早期に5-FUとソリブジンを併用したがん患者さんが重篤な骨髄抑制を発症し,死亡したという第1例目の報告がありました.それに引き続き,ソリブジン発売後1ヵ月の間に23名のがん患者さんに強度の副作用が出現し,そのうち15症例の死亡が明らかになりました.5-FUとソリブジンの2剤併用による被害を食い止めるために,緊急安全情報の発出,報道機関からテレビなどで情報伝達が行われ,社会的にも大きな問題として取り上げられました.
薬害発生の機序としてわかったことは,ソリブジンの代謝物(ブロモビニルウラシル:BV-araU)が,5-FUの代謝酵素(ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ:DPD)を阻害することで,5-FUが分解されずに体内に蓄積し,5-FUの血中濃度が著しく上昇したことで重篤な骨髄抑制(白血球・血小板減少)を引き起こしたということです.多くの被害者を出したソリブジンは数ヵ月後には製薬企業によって自主回収され,約2年後には販売中止となっています.そのため,現在の医療用医薬品添付文書にはソリブジン事件に関する表記や併用禁忌薬としてソリブジンの名前はありません.
毎年数多くの医薬品(抗がん薬を含む)が開発・承認・販売されている状況から,今回の事件のような併用薬による薬害の危険性は常にあります.がん薬物療法薬どうしの相互作用だけでなく,支持療法薬,既存疾患の治療薬などとの併用による薬害を意識しながら,問診を行うことや,お薬手帳の確認,薬剤情報の確認などを行っていく必要があると思います.過去にあった痛ましい事件を忘れることなく,教訓として頭にとどめておきたいと思います.がん薬物療法薬の多くは劇薬です.これらの薬剤を取り扱うために大切なことは,薬剤の特徴を十分に理解して,安全に使用できるようにケアすることです2,3).

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