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■はじめに—「ビッグデータ・AI」による医学の第3次革命
医療ビッグデータの利用について論じる前に,まず現在の医療分野は,「ビッグデータ・AI」による第3次革命という大きなパラダイム変革の時代に踏み込みつつあることを強調したい.医療は,これまでいくつかの大きな変革のもとに進化していった.第一の変革は,抗生物質の発見とそれによる細菌感染症の抑制である.戦前多くの若い才能を死滅させた結核は,戦前は死因の第一位で,死亡率は10万人当たり200人以上であったものが,現在では1人台になっている.第2の変革は,分子生命科学の著しい発展による医学の進歩である.1970年代からの分子生命科学の急速な発展は,実際の臨床実践の場に浸透するまで,数十年の月日を要したが,最近では,分子標的薬剤や抗体医薬などの開発によって,不治の病と見られていた疾患のいくつかが治療可能となった.
そしていまや医学を取り巻く領域において,大量の良質なデータが急速に出現し,医療の世界においても「ビッグデータ時代」が始まった.この影響は,いまではそれほど実際の臨床に目立つ変化は起こしていないが,人工知能の医療応用と相互作用して,医学・医療の根本的枠組みを変革する過程を進めるものである.現在,単なるブームとみなされている「ビッグデータ・AI」は,今後何十年と続く変革を医学・医療にもたらす第3次革命であることをあらためて強調したい.変革は遅々として進まないかもしれない.しかし,この流れは決して後戻りすることはない.
さて,医療のビッグデータであるが,主に4つの流れによって進行している(表1).
筆者は,医療ビッグデータの第1種(ゲノム医療),第2種(バイオバンク)については,拙著などいくつかの論考1)で著述したので,本稿ではデータヘルスの実践と関係の深いモバイルヘルスおよびリアルワールドデータについて論じてみよう.またその関連で「古くて新しい問題」,すなわち,国家規模のEHR(生涯疾患健康電子記録)についても論じたい.

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