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はじめに
近年,“ストーカー”という語はメディアでも頻繁に取り上げられており現代社会において広く認知された一般的な用語となっている。しかし,“stalking”が現在のように嫌がらせ行為を指すようになったのは1980年代以降である(Mullen et al, 1999)。McEwanら(2024)は,「苦痛や恐怖を伴う嫌がらせを繰り返すことで,他人の生活に自分を執拗に押し付ける,一連の行動パターン」と定義づけている。
米国における1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件,1989年のレベッカ・シェイファー殺人事件は,ストーカー行為が凶悪犯罪に発展し得ることが広く知られるきっかけとなり,1990年のカルフォルニア州における世界初の反ストーキング法成立へと繋がった。日本では,1999年の桶川女子大生ストーカー殺人事件を契機にストーカー行為等の規制等に関する法律(通称・ストーカー規制法)が成立し,その後,現在に至るまで改正が重ねられてきた(法務省,2024)。警察はストーカー規制法のもと加害者に警告や禁止命令を発するなどして再発の抑止を図っているが,近年においてもストーカーによる凶悪犯罪は続いている。
法的制裁のみでは再発の抑止は難しいとして,加害者に対して専門家による精神医学的な評価や治療的介入をすることの重要性が指摘されており(Mullen et al, 1999),さらに司法,福祉,医療,社会支援分野の関係諸機関が連携したうえでの多様な戦略に基づくアプローチが求められている(Belur et al, 2024)。しかし,国内における加害者アプローチの取り組みは先進諸外国と比較して後れを取っている。本稿では,我が国の現状を概観するとともに,各国の主要な取り組みを整理し,併せて当院での実践を紹介した上で,今後の課題について筆者の見解を述べる。

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