特集 わが国の司法精神療法の展望
医療刑務所における摂食障害治療
瀧井 正人
1
1北九州医療刑務所
pp.519-524
発行日 2026年8月5日
Published Date 2026/8/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt52040519
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はじめに
近年,女子刑務所をはじめとした矯正施設に摂食障害(ED)を伴う受刑者が増加し,その対応の難しさや生命の危機状態に陥る患者も少なくないなど,矯正施設における大きな問題の一つとなってきた(小島,2015)。筆者は2013年から北九州医療刑務所(当所)に勤務し,一般刑務所では対応不能と思われたED患者(ほぼ全例が神経性やせ症(AN))の治療を行ってきた。これらの患者の病態はEDの中でも特に重篤であり,一般刑務所における通常処遇はもちろん,EDの標準的治療もその効果は極めて限定的であると考えられる。そのような現状において,当所では,医療刑務所のアドバンテージを活用した独自の治療プログラムを実施し,良好な治療結果・予後を得ている(瀧井,2016,2020)。
本稿においては,EDの病態についての筆者の見解を述べた後に,当所のAN女性患者のプロフィール,AN治療プログラムとその治療成績・予後について紹介したい。また,ED患者の常習窃盗については,すべてクレプトマニア(窃盗症)(American Psychiatric Association, 2013)という疾患であるとされることが多いが,実際に患者を診ている立場からの意見を述べたい。

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