- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年,さまざまなトラウマ的出来事と自殺との関連が報告されている。たとえば,幼少期に身体的虐待や性的虐待を受けた成人は,被虐待体験のない成人よりも自殺企図の可能性が高い(Brodsky et al, 2001 ; Chen et al, 2010)。また,幼少期の心理的虐待やネグレクトと,自殺念慮や自殺企図との正の相関が示唆されている(Xiao et al, 2023)。さらに,DVなどの対人間暴力の被害者にも自殺に関連した問題が増加することや(White et al, 2024),逆境的環境で生きている女性の性労働者の約4分の1に,自殺念慮や自殺企図が認められることが報告されている(Millan-Alanis et al, 2021)。
逆境的環境において虐待や暴力などを始めとするトラウマを体験した人の中には,心的外傷後ストレス症(Posttraumatic Stress Disorder, PTSD)を発症する人も少なくないのだが,デンマークのコホート研究では,PTSD患者の自殺死亡率は,非PTSD患者の13倍に上ることが報告されている(Gradus et al, 2015)。その他にも,いくつかの研究で,PTSDと自殺関連行動(自殺念慮,自殺未遂,自殺企図)との間に,有意な正の相関関係が認められている(Akbar et al, 2023 ; Krysinska & Lester, 2010)。また,PTSDとうつ病の併存は,自殺のリスクを著しく高めることも報告されている(Oquendo et al, 2005 ; Panagioti et al, 2012)。
これらを踏まえて,本稿では,主にPTSDと自殺関連行動について概観し,望まれる対応策について考えたい。

Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.