連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・19
深刻な健康問題―自殺
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.772-773
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100167
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図に示すグラフを見ていただきたい.これは,日本における人口10万人あたりの自殺による死亡者数であり,平成5~9年の5年間の17.6人から,平成10~14年の5年間の24.6人と約4割の増加を示している.このような急激な死亡数の増加は,インフルエンザのような感染症の大流行や,戦争のようなきわめて特殊な要因でしか起こらないのが通常であるが,近年,日本での自殺者の数が増大し,大きな社会問題になっていることは承知のとおりである.
実際,日本の自殺者は年間約3万人を推移しており,1日あたり約80人が自殺している計算になる.その背景として,失業者の増加など,昨今の厳しい社会・経済状況が指摘されている.しかし,こうした自殺の増加は,不況に悩む日本のみの現象ではない.例えばサンゴ礁に囲まれた地上の楽園といったイメージの強いマーシャル諸島などの南太平洋島嶼国や,北欧の成熟した豊かな国として知られるフィンランドなどでも自殺が増えている.
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