特集 先生は大変だ―「先生たち」のメンタルヘルスを通して見えるもの
セラピストの専門性と「自由である」こと
長川 歩美
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1A&C中之島心理オフィス
pp.868-869
発行日 2024年12月5日
Published Date 2024/12/5
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「セラピストを先生と呼ぶかどうか論議」がオンラインで散見されるようになって久しい。医師は「治してくれる」という意味で先生と呼ぶのに抵抗はないが,セラピストとの心理療法は,毎回何かを教え授けてくれるわけではないし,積極的に「治してくれる」わけでもない。ただそこにいて話を聞いて,時々何かを質問したり,ボソッと言ったりすることはあっても,「先生」にしては押しが弱く,何をしてくれているのか分かりにくい。そうすると実感からは「先生」という呼称にはつながらない。セラピストを「先生」と呼ぶときには「お世話になるから」「社会の習慣だから」「資格を持っているから」といった形式的な動機がはたらくことが多いかもしれない。そのセラピストの個性や年齢,社会的立場にもよるが,セラピストは実際には,転移による呼び間違いも含めていろいろな呼び方で呼ばれる。クライエントから投げかけられるその呼称に,今自分がどのような存在か,相手の何を担っているのかを教えられることもある。ここである印象的な事例を思い出したので,要素をそのままに架空の内容に変えて紹介させていただきたい。
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