連載 今月のニュース診断
呼吸器をつける自由・はずす自由
斎藤 有紀子
1
1北里大学医学部医学原論研究部門法哲学・生命倫理
pp.276-277
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100176
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ALS嘱託殺人事件
2004年8月,当時40歳だった筋萎縮性側索硬化症(ALS)の長男の人工呼吸器を止め,自分も自殺を図った母親(60歳)について,横浜地裁は,2005年2月14日,懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を出した(朝日2月14日)。
この事件は当初,「看病疲れで無理心中図る(共同2004年8月27日)」「無理心中:寝たきり長男が死亡,母親は手首に軽傷(毎日2004年8月28日)」と,母親による無理心中事件として報じられた。しかし裁判の過程で,患者本人の嘱託・承諾があったかどうかが1つの争点となり,検察側は,「長男の希望は延命治療の拒否で呼吸器停止ではなかった」と殺人罪を主張,弁護側は,母親は長男の懇願に応えて呼吸器のスイッチを切った,と嘱託殺人罪の可能性を主張していた。
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