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本特集のメインタイトルは「先生は大変だ」である。これは本当にそのように思う。私は公立小学校のスクールカウンセラーとして何校か勤務し,実際に学校の先生たちが働く現場に関わっているが,これまで働いてきた中で大変そうに見えない先生という存在にはほとんど出会ったことがない。先生方にとっては放課後,スクールカウンセラーとして面接をした結果などを私が伝えようと話しかけたとき,ある若い先生は目を赤くしたとても疲れた様子で大きな欠伸をしていた。私が思わずかけた第一声は,「大丈夫ですか?」だった。明らかに疲れの極致に達していたその先生の姿を見て,更なる負担となるかもしれない面接報告をすることを,私は躊躇わずにはいられなかった。
ここで私が先生に面接内容を報告する必要があるのは,私が学校で言うところの「先生」ではなく,スクールカウンセラーとして勤務しているからである。本特集で私に与えられた役割は「多職種支援のなかでの『先生たち』」ということであるが,「多」職種の一部として私は学校という現場にいる。現在の学校では,医療領域ほどには多くないが,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど「多」職種が関わっている。そのような状況になっていったことには長い歴史があるが,その大きな理由の一部が学校にいる子どもの問題が多様化してきた実状に対応するためであることは間違いないだろう。
しかし私は時に,学校という現場にいる大多数の職種,つまり教員という「先生」からすれば,スクールカウンセラーなどの職種は「他」職種であるかもしれない,と感じることがある。私の迫害感に過ぎないかもしれないし,各々の学校現場や先生方個々人の性質にもよるのかもしれないが,心理の専門家という立場からの意見を述べるとき,それがどの程度受け入れられるかは本当に個々に異なっている。ある先生は「そういう見方もあるんですね」と興味を示してくれたり好意的に受け取ってくれたりする一方で,別の先生は「でも結局あの子はこうなんですよ」と,一見するとこちらの意見を聞いてくれているようでご自身の断定的な意見に戻ってしまうという場合も多い。外的にはスクールカウンセラーを積極的に活用してくれる管理職から後者のような発言を聞くと,果たして自分は何のためにここで働いているのだろうかと感じることもある。
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