- 有料閲覧
- 文献概要
この特集の,編者・妙木浩之氏の本来の意図は,教師自体が,もろもろの社会変動や子どもたちの変化で,従来のいわば権威の中での安定した教師としての基盤を保てなくなり,教師自身がメンタルヘルスの問題を抱えるようになっていることへの問いかけであるが,筆者はむろんのこと,その問題を考えたくないわけではない。
しかし,その問題を論ずるのは,もっぱら他の執筆者にお任せして,筆者はちょうど裏側の,「教師がセラピストになる際の問題点から見てみたい」と思ったのである。この視点は,おそらく,他の執筆者の思考のまったくの埒外にある,と思うからだ。
私たちが,当初,臨床心理士資格認定協会を立ち上げ,現在の臨床心理士集団の基礎を作ったときに,もともと純粋に,こころの問題にかかわる専門家としてのそれに邁進していた人々は,大学でもまた大学院でも,ひたすら,それに向かっての勉学をしてきたわけだが,一方で,たとえば,故・前田重治先生や筆者のように,医師という基盤から,この心理職という職種に入ってきたものがあるように,教師という基盤から,セラピストに参入してきた人たちが,当然ながら医師の数倍あった。
そこで見えてきた,教師という職種の特徴は,当然ながら,これにもいろいろな広がりがあり,もちろんのこと一筋縄や一枚岩ではないのだが,一番目立つのは,やはり教師としての視点,というか世界の見え方から生じてくる児童観が基礎にあり,「指導する」という暗黙の前提が無意識的に働いてしまって,カウンセラー本来の,クライエント個人を尊重し「ひたすら聞く」という方法論がなかなか身につかず,どうしても,「教え諭す」ということが基本になってしまうことが,多くの人に認められたのである。
Copyright© 2024 Kongo Shuppan All rights reserved.