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I 多職種チーム支援との出会い
2015年春,私は地域精神保健の実践に携わるようになった。きっかけはフィンランドのオープンダイアローグを知ったことだったが,日本にケロプダス病院のような病院はないと思い,千葉県市川市のACT-Jというチームに入職した。ACT(Assertive Community Treatment)は多職種チームが重い精神疾患をもつ人の地域生活を24時間体制で支援するプログラムである。チームのスタッフはその専門職種にかかわらず,ケースマネジメントを行いアウトリーチをすることで直接支援と支援コーディネートの両方を担う。
ACTチームはITT(Individual Treatment Team)という,利用者個々の小さな担当チームを形成する(下平,2018)。ITT内にはプライマリケースマネジャー(以下,プライマリ)がいるが,他のITTメンバーも同様に利用者支援に責任をもつ。ITTの動きを内部に入って体験して,その柔軟性と機動力,チームスタッフの互いを補完し助け合う動きにとても感動したのを今でもよく覚えている。ACTではチームリーダーが全てのスタッフの職種やスキルなどの特性に鑑みて利用者個々のプライマリを決定し,プライマリと相談しながらITTメンバーを決める。大きなチームではチームリーダーが,ITTではプライマリがチーム内外の“連携のコアプレイヤー”となっている。
私は,その後,所沢市アウトリーチ支援チームの立ち上げと運営に携わるという貴重な機会を得て,ますますACTチームでの経験の意義を実感するようになった。と同時に,オープンダイアローグの研修で学んだことの意味もまた実感するようになった(下平,2022)。

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