特集 教科書には書いておらず,大学院でも教えてもらえない,現場で学ぶしかないありふれた臨床テクニック集
24時間を見守る技術―社会的養護でのチームケアにおける心理士の実践的技術
尾谷 健
1
,
阿部 晋也
1
1横浜いずみ学園
pp.82-86
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ 「エアコンの温度下げようか?」
部屋の方で物音がする。見に行くと,小学生の男の子がベッド柵を蹴っている。こちらに気づき,蹴るのをやめる。私は部屋に入り,「どうしたの?」と尋ねるが,男の子は何も言わない。しばらくして,男の子は「言っても意味ないし,迷惑かけちゃうし,いいよ」と言う。こちらはトーンを合わせながら「そうなの?迷惑とは思っていないよ」と返し,待つ。しばらくして,男の子は「嫌なこと思い出した」と,過去の話をぽつりぽつりと話し始める。話に一区切りついたところで,こちらからは「座ったら?」と促す。男の子はイスに座る。こちらは床に座る。男の子が服で顔の汗を拭うので,部屋の暑さを感じつつも言うタイミングをつかめずにいた私は「ちょっとエアコンの温度下げようか?」と尋ねる。男の子は「どっちでもいい」と拒否はしないので,「ちょっと待っててね」と私は空調の温度を調整しにいく。部屋に戻ると,男の子は「今日はいろいろあって疲れた」と,学校での出来事や他児とのトラブルなどについて話す。私は話を聞いて,「大変だったね。ちょっと休んだら」と声をかける。男の子はうなずいて,ベッドに移動し,横になりながら「ちょっと寒い」と言う。「じゃあ,ちょっと弱めておくね。また様子見にくるよ」と言い,私は部屋を後にする。

Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.