特集 教科書には書いておらず,大学院でも教えてもらえない,現場で学ぶしかないありふれた臨床テクニック集
認知行動療法家はクライエントを慰めるのか
坂野 雄二
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1医療法人社団五稜会病院心理室顧問
pp.24-28
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
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Ⅰ はじめに
奇妙な表題の小論を書くことになった。「クライエントさんを慰める」という発想はこれまで私の頭の中には全くなかった。本号の特集を企画編集されている東畑開人先生,山崎孝明先生からご依頼いただいたままの表題である。しかも「ベテランたちの日常」というテーマの中で「エッセイ風に」というご依頼をいただいた。何を指してベテランなのかはわからないが,今は無き東京教育大学の付属教育相談施設で大学院生として,師である内山喜久雄教授のご指導をいただきながら,吃音症で生活に支障をきたしていた中学生のお嬢さんの援助を担当させていただいたのが半世紀少し前の話であるので,以来,多くのクライエントさんを援助させていただいたことだけは確かである。でも,私はクライエントさんを慰めるために認知行動療法を行ってきたわけではない。
執筆要領と共に頂戴した巻頭言を拝読させていただき,違和感を覚えるところが少なくなかった。しかし,その中に,「話は具体的であればあるほどいい。これが臨床の学の大原則です」とあった。臨床心理学的な援助は,具体的でなければならない。同時に,シンプルな方が良い。レトリックに拘るかのような「心理描写」や抽象的な解釈,議論は他の学問に委ねておけばよい。実学としての臨床心理学はクライエントさんの具体的な現実の生活に即して考えなければならない。「話は具体的であればあるほどいい」のワンフレーズに惹かれて小論を書くことをお引き受けした。
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