特集 開業論――はじめての組織運営・援助実践ガイド
クライエントを開拓する――トラウマケア
花丘 ちぐさ
1
1国際メンタルフィットネス研究所
pp.583-587
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25050583
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I はじめに
「開業論―はじめての組織運営・援助実践ガイド」という特集で,トラウマケアを中心に,クライアントを開拓するという視点から執筆させていただく運びとなった。まず初めに,私は信田さよ子氏のご著書に,長い間力をいただいてきたことに心から感謝したい。特に,まだ若く,トラウマのこと,嗜癖のこと,不適切養育に関することなどの知識を持たず,ただ悶々としていた頃に,信田氏のご著書に触れて「そういうことだったのか」とまさに目からうろこが落ちる体験をした。この体験が後に,トラウマについてわかりやすい言葉で伝えるという,現在の仕事に結びついている。
多くの心理療法家が体験していることであると思うが,私も心にさまざまな傷を抱え,それを癒やそうと心理学に惹かれて,まずは自分のためにあれこれ学ぶうちに,最終的には臨床家となったという経緯がある。開業については,私はすでに20代で通訳翻訳業の会社を興していた。まずどこかのクリニックに心理の専門家として雇用されて,後に独立したわけではない。そういう意味で,私が開業について語ることが読者のニーズに応えるものになるかどうか定かではないが,自らの軌跡を振り返りつつお伝えしていこうと思う。

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