特集 「信じたい」という心理―心の病から陰謀論まで
「私は絶対に太っている」―神経性やせ症
竹田 剛
1
1神戸学院大学
pp.719-722
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
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「まだ色んなところに肉がついている」「これ以上太ってしまったら台無しになる」。たとえ客観的な事実に反していても,自分自身の体重・体型に関するさまざまな(往々にしてネガティブな)言説を多くの患者が〈信じている〉精神障害がある。摂食障害,特にその下位分類である神経性やせ症である。神経性やせ症患者は,食べることに強い抵抗を示して食事の制限に努め,痩身へのこだわりや体重増加への強い恐怖を示し,著しく低い体重を維持しようとする。そのために下剤乱用や過度な運動などの代償行動を取る者もいる(American Psychiatric Association, 2013)。それらは自身の生命を脅かすまで続く場合もあり,一般人口と比較して死亡率が5.86倍も高く,精神障害のなかでも高い死亡率を持つ(e.g. Arcelus et al., 2011)。

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