講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・8
思春期やせ症
梶山 有二
1
Yuji KAJIYAMA
1
1東京都東久留米保健所
pp.570-573
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900864
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●はじめに
近頃,若い女性たちがダイエットに夢中になったり,エステティックサロンやフィットネスクラブに奔走する姿は珍しいものではなくなった.シェイプアップ産業も花盛りで,それに関する広告や本も巷にあふれている.しかし,その陰で自分の体重や体型に異常ともいえるほどこだわり,“食べること”にコントロールが利かなくなってしまう病的な人たちがいる.思春期やせ症あるいは神経性食思不振症と呼ばれる病いがそれである.これは,思春期前後の女子によくみられる一種の神経症圏の病いであるが,“食べること”,“痩せること”をテーマにしたこの病態は,思春期の女性心理の一側面だけにとどまらず,個人の精神発達と家族との関係性,さらには女性を取り巻く社会・文化の側面までも映し出しているように思われる.
さて,本論では,まず思春期やせ症の輪郭をある程度はっきりさせるために,特徴的な症状とともに,現在使われている診断基準を紹介し,症状の背景にある本症の心理特性を述べてみる.さらに,本症にまつわる社会文化的背景についても考えてみたい.
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