特集 心不全パンデミック時代の新しい診療知を求めて
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心不全におけるゲノム医療とは?
野村 征太郎
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1東京大学医学部附属病院循環器内科,同 先端循環器医科学講座
キーワード:
▶心不全を含めたあらゆる疾患は,遺伝要因と環境要因の相互作用(遺伝×環境)によって発症・進展が規定されている.
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▶サルコメア遺伝子変異症例は若年発症・家族性発症の傾向があり,心血管イベントを起こしやすく,HCMにおける変異検出も診療上重要と考えられる.
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▶遺伝子変異陽性のHCM患者の家族において遺伝学的検査によるカスケードスクリーニングが重要である.
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▶ファブリー病やトランスサイレチン型心アミロイドーシスなどHCMと類似した表現型を呈する疾患についても,積極的な遺伝子変異検出によって正確な診断に辿り着くケースが増える.
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▶拡張型心筋症の原因遺伝子は,Titin・Lamin A/CやDesmoplakinなど,心筋細胞の機能を維持するうえで重要と考えられるタンパク質をコードする遺伝子である.
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▶アルコール性心筋症・産褥性心筋症・抗がん剤関連心筋症などにおいて,DCMの最大原因変異であるTTN遺伝子の短縮型変異が背景に存在する.
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▶拡張型心筋症においてLMNA遺伝子変異陽性患者は左室リバースリモデリングを起こしづらい重症心不全に移行しやすい.
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▶LMNA変異DCM症例は致死性不整脈も発症しやすいため,ICD適応が検討される.
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▶突然死の予防という観点からは,心筋症だけでなく遺伝性不整脈や心臓サルコイドーシスなどの診断も重要となるため,幅広い遺伝学的検査を含めた多面的な診断法の確立が重要となる.
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▶コモンバリアントで構成されるポリジェニックスコアで疾患発症リスクを層別化できる可能性がある.
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▶クローン性造血もDCMにおける治療応答性を負に制御している.
Keyword:
▶心不全を含めたあらゆる疾患は,遺伝要因と環境要因の相互作用(遺伝×環境)によって発症・進展が規定されている.
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▶サルコメア遺伝子変異症例は若年発症・家族性発症の傾向があり,心血管イベントを起こしやすく,HCMにおける変異検出も診療上重要と考えられる.
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▶遺伝子変異陽性のHCM患者の家族において遺伝学的検査によるカスケードスクリーニングが重要である.
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▶ファブリー病やトランスサイレチン型心アミロイドーシスなどHCMと類似した表現型を呈する疾患についても,積極的な遺伝子変異検出によって正確な診断に辿り着くケースが増える.
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▶拡張型心筋症の原因遺伝子は,Titin・Lamin A/CやDesmoplakinなど,心筋細胞の機能を維持するうえで重要と考えられるタンパク質をコードする遺伝子である.
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▶アルコール性心筋症・産褥性心筋症・抗がん剤関連心筋症などにおいて,DCMの最大原因変異であるTTN遺伝子の短縮型変異が背景に存在する.
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▶拡張型心筋症においてLMNA遺伝子変異陽性患者は左室リバースリモデリングを起こしづらい重症心不全に移行しやすい.
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▶LMNA変異DCM症例は致死性不整脈も発症しやすいため,ICD適応が検討される.
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▶突然死の予防という観点からは,心筋症だけでなく遺伝性不整脈や心臓サルコイドーシスなどの診断も重要となるため,幅広い遺伝学的検査を含めた多面的な診断法の確立が重要となる.
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▶コモンバリアントで構成されるポリジェニックスコアで疾患発症リスクを層別化できる可能性がある.
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▶クローン性造血もDCMにおける治療応答性を負に制御している.
pp.536-541
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.43.04_018
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はじめに
心不全を含めたあらゆる疾患は,遺伝要因と環境要因の相互作用(遺伝×環境)によって発症・進展が規定されている.ある遺伝要因が特定の分子機序を経て均一な表現型を呈することもある一方,複数の遺伝要因が環境負荷や加齢・代謝ストレス・炎症などと複雑に絡み合うことによって病態が形成されることもある.とりわけ心不全は,遺伝的背景・併存疾患・生活環境によって多様な臨床表現型を示すにもかかわらず,現在の臨床現場では画一的な治療が適用されており,分子機序に基づいた精密治療(precision therapeutics)がいまだ確立されていない.

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