Japanese
English
綜説
心筋症のゲノム解析
Genomic Analysis of Cardiomyopathies
森田 啓行
1
,
永井 良三
2
Hiroyuki Morita
1
,
Ryozo Nagai
2
1Department of Genetics, Harvard Medical School
2東京大学大学院医学系研究科循環器内科学
1Department of Genetics, Harvard Medical School
2Department of Cardiovascular Medicine, University of Tokyo
pp.653-665
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100819
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はじめに
心筋症1)とは,収縮拡張異常ないし電気生理学的異常を伴い,不適切な心室の肥大あるいは拡張を来す一群の心筋疾患をいう.その原因は様々であるが,遺伝性であることが多い.心臓に限局する場合(primary)と全身性疾患の一部である場合(secondary)とがあり,心血管死亡や進行性心不全に付随する障害を来すことが多い.病変が主に心臓に限局するいわゆるprimary cardiomyopathyはgenetic,mixed,acquiredに分類される.geneticは肥大型心筋症,不整脈原性右室心筋症,心室心筋緻密化障害,グリコゲン貯留性心筋症,伝導系障害,ミトコンドリア心筋症,イオンチャンネル病(QT延長症候群,Brugada症候群,カテコラミン感受性心室頻拍,QT短縮症候群など)が,mixedには拡張型心筋症と拘束型心筋症が,acquiredには心筋炎,ストレス誘発性のたこつぼ心筋症,産褥心筋症,頻脈誘発性心筋症,アルコール性心筋症などが含まれる.
本稿では肥大型心筋症,グリコゲン貯留性心筋症,心Fabry病,拡張型心筋症,不整脈原性右室心筋症,心室心筋緻密化障害,ミトコンドリア心筋症,拘束型心筋症の原因遺伝子変異のうち主要なものに関して概説する.そもそも一つの疾患カテゴリー(例えば拡張型心筋症)にも様々なメカニズムによる病態が含まれている.逆に,一つの遺伝子が複数の疾患カテゴリーの原因遺伝子になっている場合がある.このように疾患と原因遺伝子は決して一対一対応ではない.ここでは疾患ごとにその原因遺伝子変異とメカニズムを紹介する形式で進めることにする.
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