連載 知っておきたいこと ア・ラ・カルト
成人の先天性免疫異常症
金兼 弘和
1
1東京科学大学小児地域成育医療学講座
キーワード:
成人の先天性免疫異常症
Keyword:
成人の先天性免疫異常症
pp.1286-1288
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.08_037
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はじめに
先天性免疫異常症inborn errors of immunity(IEI)とは,免疫を担う細胞や分子の機能異常を原因として,易感染性のみならず自己免疫疾患や悪性腫瘍の合併などさまざまな臨床像を呈し,原発性免疫不全症と同義と考えてよい.IEIのほとんどは単一遺伝子病であり,免疫を担う分子をコードする遺伝子の変異によって発症する.これまで550種類を超える疾患が知られている1).IEIのほとんどは遺伝子変異によって発症するため,小児期発症と思われがちであるが,成人期に発症することもまれではない.また感染症治療やその予防法の進歩に加えて,同種造血細胞移植hematopoietic cell transplantation(HCT)の成績向上などによって,成人にキャリーオーバーする患者も増え,成人患者はIEI全体の半数を占めると考えられる.しかしながら成人診療科でIEIを専門とする医師は少なく,成人診療科は臓器別になっていることが多いため,多様な症状や合併症を有するIEI患者の成人期における診療は,主科が決まらず,診断や治療に難渋することが多い.そのため小児科で継続して成人IEI患者をフォローせざるをえないこともしばしばあるが,成人患者では高血圧や糖尿病の合併,さらには小児では見かけない癌など成人特有な問題があり,小児科だけでの対応は困難である.本稿を参考に一人でも多くの成人診療科の医師にIEIの知識を深めて,その診療に積極的に関わってもらいたい.

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