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食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応と治療
食道表在癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術endoscopic submucosal dissection(ESD)は胃癌に引き続いて2008年に保険収載され,現在では標準治療となっている.食道ESDは外科手術や化学放射線療法chemo-radio therapy(CRT)と比較して低侵襲な治療法であり,食道表在癌では術前に壁深達度や病変範囲,転移の診断を行って詳細に進行度を評価する必要がある.2020年発刊の「食道癌に対するESD/EMRガイドライン」1)においては,clinical T1a-EP/LPM(cEP/LPM)癌が内視鏡切除の適応とされている.内視鏡治療の適応を決定するうえでは,深達度診断に加えて病変の範囲診断も同様に重要である.範囲診断には画像強調拡大内視鏡[NBI(Narrow Band Imaging)併用拡大内視鏡観察,BLI(Blue Lazer Imaging)併用拡大内視鏡観察]やヨード染色が推奨され,ヨード染色ではより明瞭に病変境界を視認できる.病変の周在性は内視鏡切除後の狭窄リスクと密接に関連するため「術前に周在性の評価を行うことが強く推奨」され,周在性が広い場合には内視鏡的切除後に狭窄をきたす可能性がある.cEP/LPM癌においても,全周性病変に関してはESD後の狭窄率が高いと報告されている.Miwataら2)の報告では,全周切除後にステロイド局注もしくはステロイド内服にて狭窄予防を行った患者であっても,長径50mmを超える切除を行った場合には85%(11/13例)に6回以上のバルーン拡張術が必要であった.一方,長径50mm以下の切除の場合には,6回以上のバルーン拡張術が必要であったのは17%(1/6例)のみであり,長径50mmを超える切除径がESD後狭窄のリスクとされた.したがって,cEP/LPM癌のESD適応病変は非全周性病変,5cm以内の全周性病変とされ,5cm以上の全周性のcEP/LPM癌の治療にはCRTもしくは外科的手術が推奨された.

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