特集 大規模災害時の食と住に関する感染制御と予防衛生
3.コンパニオンアニマルの感染症について
森田 幸雄
1
1麻布大学獣医学部
pp.18-25
発行日 2025年9月25日
Published Date 2025/9/25
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.09.01_0018-0025
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近年,ペット(愛玩動物)は,伴侶のように共に暮らす関係であることから,「コンパニオンアニマル」という呼称が一般的になっている.いわゆる「家族」として,ペットはヒトと同様またはそれ以上の密接な結びつきを持つこともある.しかし,親密に暮らす関係であることから,ペットの感染症による疾病例やペットと同じ感染症でヒトが発症する事例が問題となっている.感染症は,「ヒト固有の感染症」「動物から動物へ感染し,ヒトは感染しない感染症(動物固有の感染症)」,「動物からヒトへ感染する感染症(人獣共通感染症)」がある.イヌとネコは食肉目(Carnivora)であるが科が異なり,イヌの属名はCanis,種小名はlupus,亜種名はfamiliaris,ネコのそれらはFelis silvestris catusであり,お互いに遺伝学的に遠い関係であるので,イヌ固有の感染症がネコに,ネコ固有の感染症がイヌに感染することは少ない.しかし,人獣共通感染症はネコ同士,イヌ同士,他の動物からイヌやネコに,そしてイヌやネコからヒトなどに,種の壁を越えて感染することがある.このような背景から,本稿においては,飼育頭数の多い,イヌ,ネコからの感染症を対象としたコンパニオンアニマル由来感染症を主体に述べる.

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