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1996年7月,学校給食に起因する腸管出血性大腸菌O157(以下,EHEC O157)による児童の集団食中毒事件が発生し,総計9,523 名(児童は7,892名)の患者のうち3名の児童が亡くなった1).本事例は,食中毒でも死亡することがあるという教訓を人々に与えることのなった初の集団事例であった.EHECは,出血を伴った下痢や発熱を惹起し,重症の場合は溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こして重篤な症状を示すことがあり,特に,児童についてはEHEC O157に対する感受性が高いことから重症化しやすい2).本事例において,HUSを引き起こしたものの,寛解した児童の1人が19年後の2015年10月にHUS後遺症により死亡したことなどからも,児童の感染や臨床的なコントロールには特に注意を払わなければならない.2017年8月に,埼玉県北部地域および群馬県中毛地域においてEHEC O157による広域食中毒事例が同時期に発生した.患者は,複数の自治体にチェーン店を展開するそうざい店(以下,A1店)の利用者であり,調査段階で「ハムいっぱいポテトサラダ」または「リンゴいっぱいポテトサラダ」(以下:調理済みポテトサラダ)が原因食品ではないかと注目された.A1店で販売された調理済みポテトサラダの主たる原材料は高崎市内の食品製造施設(以下,B施設)から搬送されていることが判明したため,複数の自治体において原因究明のための詳細な調査が実施された.これらの調理済みポテトサラダを販売したA1店および同系列A2店に関する調査およびこれらの総括については詳細に報告されているが3-5),原因と疑われた当該食品の製造施設および他の自治体に関する詳しい調査報告は認められない.そこで,ここでは調理済みポテトサラダのベースとなる加工品(以下,加工前ポテトサラダ)をA1店などに納品していたB施設に関する調査を中心に本事例について言及したい.
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