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サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)は,TORCH症候群のなかで最も高頻度に胎児感染を起こし,乳幼児に神経学的な後障害を残すきわめて重要な病原体である。米国では,健康障害を有する先天性CMV感染症児1人あたりの年間医療費は約30万ドルと試算されており,これを日本に当てはめると毎年約300億円の医療費が費やされる計算になり,医療経済に与えるインパクトも大きい。CMV抗体陰性妊婦のうち,1〜2%が妊娠中に初感染を起こし,そのうち約40%が胎児感染に至る。胎児感染例の20%が症候性,80%が無症候性の先天性CMV感染症児として出生する。出生児の症状としては低出生体重,肝脾腫,肝機能異常,小頭症,水頭症,脳内石灰化,紫斑,血小板減少,痙攣などがあり,症候性の先天性CMV感染症児の90%,無症候性児の10〜15%が精神遅滞,運動障害,難聴などの後障害をきたす。妊娠前から抗CMV抗体を保有する妊婦であっても,再活性化ないし再感染によって先天性感染や児障害を起こすこともある(図1)。日本における妊婦の抗CMV抗体保有率は,1990年頃には90%台であったが近年70%に減少し,今後,先天性CMV感染症児出生数がさらに増加することが危惧される1)。本稿では,先天性CMV感染症による児障害を減らすための母子感染予防法,胎児治療についてのこれまでのレビューに加え,われわれが取り組んでいるCMV母子感染予防対策について紹介する。新生児に対するスクリーニングと治療に関しては,別稿に詳細が述べられているので参照されたい。「KEY WORDS」サイトメガロウイルス(CMV),母子感染,スクリーニング,胎児治療,免疫グロブリン
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