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筆者はこれまで角膜専門医として角膜外来とドライアイ外来の診療に従事し,眼表面疾患の手術や角膜移植などを担当してきた。さらに大学院在学中,米国留学中には角膜実質や内皮に関する基礎研究に従事し,臨床面でも研究面でもどっぷり角膜の世界に浸ってきた。ところが,6年前に留学から戻ってからは大学で眼形成外来も担当するようになり,眼形成の世界に足を踏み入れた。始めてみると,眼形成手術はオキュラーサーフェスから連続して繋がっている部位を扱うため,眼表面と表裏一体であることを実感し,とてもやり甲斐を感じてどんどんのめり込んでしまった。現在は眼瞼下垂症,内反症の手術を中心に年間500例程度に従事しているが,年々増加の一途を辿り,前眼部手術や内眼手術の件数を上回るようになっている。眼形成外科医としてはまだ駆け出しの身であるが,ドライアイを含む角膜の分野と眼形成の分野で研鑽を積むなかで,両者が相互にかかわる病態に接する機会が多く,形成外科での眼形成術後の眼表面評価を依頼されることも多いため,本稿ではこれらの病態について考えていきたい。「オキュラーサーフェス」とは一般に,角膜および眼球結膜とその表面に存在する涙液で構成される部位を指す言葉である。眼球結膜は結膜円蓋部で折り返して眼瞼結膜へと移行し,眼瞼結膜とオキュラーサーフェスは接している。瞼板に存在する脂腺であるマイボーム腺は眼瞼縁に開口し,分泌される脂は涙液表面の油層の形成を担い,涙液層の安定性に寄与している。このような関係にある眼瞼とオキュラーサーフェスは互いに直接影響を及ぼし合い,そのバランスが崩れると種々の病態が惹起される。眼形成手術の適応となる代表的な疾患として眼瞼下垂症,眼瞼内反症・睫毛内反症について,それぞれのオキュラーサーフェスに及ぼす影響を考えていきたい。
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