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内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)は45年前にKawai,相馬,Classenらにより開発された内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)関連手技である1)。当初の外科的胆管結石治療後の遺残結石に対して乳頭の胆管開口部を広げて結石の自然排石を促すのが目的であったが,今日では引き続く結石除去用の処置具の進歩に伴い,総胆管結石に対する乳頭処置の標準手技となっている。一方,内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(endoscopic papillary large balloon dilation:EPLBD)はErsozらにより2003年に報告された総胆管結石に対する比較的新しい乳頭処置手技である2)。従来ESTのみでは結石除去が困難であった大結石などに対して,EST後に径12mm以上のラージバルーンによりさらに胆管開口部を広げることで結石除去を容易にする画期的な方法である。これらEST,EPLBDともにERCP関連手技として重要な手技であるが,一方でERCP関連手技は術後膵炎など予期し得ない偶発症が起こりうることも知られている。今回,日本消化器内視鏡学会として藤本一眞ガイドライン委員長のもと,ESTとEPLBDを安全に施行するために診療ガイドライン委員会(委員長:EST;良沢昭銘,EPLBD;糸井隆夫)を設置し,わが国で初めてのEST診療ガイドライン1)およびEPLBD診療ガイドライン2)が作成された。これまでのわが国において作成されたガイドラインは,専門家の経験と知識に基づき執筆され,現在国際的に標準とされているevidence based medicine(EBM)の手順に則って作成されたものではなかった。そこで本診療ガイドラインでは「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」3)に従い,EBMに基づいたガイドライン作成が行われた。EPLBDはESTに引き続いて行われる場合がほとんどであり,両ガイドラインは重複する点も多く,将来的には統一したガイドラインとすることが望ましいと思われるが,本稿ではEST診療ガイドラインおよびEPLBD診療ガイドラインのそれぞれについて解説する。
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