特集 CURRENT TOPICS 3rd GAST SUMMIT JAPAN学術講演会ハイライト
ワークショップ:わが国から胃癌を撲滅するための具体策 1 H.pylori除菌治療の現状と展望
村上 和成
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1大分大学医学部消化器内科教授
pp.23-23
発行日 2019年3月15日
Published Date 2019/3/15
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.14.02_0023-0023
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疫学的には,癌全体の死亡者数は増加し続けている。2016年における癌の年間死亡者数は男女とも1985年の約2倍となっている。その中で胃癌については,男性が約2万人,女性が約1.5万人で,癌全体では3番目の死亡者数となっている。年齢調整しない罹患率および死亡率をみると,胃癌の罹患数は増えてきており,年間13~14万人となっている。一方,死亡者数は年間5万人ほどで推移しており,40年間であまり変化はなかった。しかし,2013年頃から徐々にではあるが減少し始め,9.2%という減少率が出ている。これには,2000年にH. pylori除菌治療が胃潰瘍で保険適用になった影響があると考えられる。実際にH. pylori除菌による胃癌減少への影響について,2016年のメタ解析では,一次癌,健康無症候例では有意差ありという結果が出ている。早期胃癌術後例,二次癌の予防にも有意差がある。ただ,対象となっている論文はほとんどが東アジアでの研究である。除菌者数については,胃潰瘍でH. pylori除菌が保険適用になってからは年間約150万人が除菌を行っている。感染者数についても,若年者を中心に感染率がどんどん下がってきている。以上から現状をまとめると,胃癌による死亡者数は徐々に減少しており,その原因としてはH. pylori感染者数の減少および除菌者数の増加が挙げられる。また,胃癌の早期発見と内視鏡治療の普及も影響しているものと思われる。除菌治療が普及したことで,胃炎を内視鏡でみる傾向が強まり,そのことが胃癌の早期発見につながっている。胃癌による死が撲滅の方向へ向かっていることは間違いないと思われる。
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