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膵癌患者は増加しており,5年生存率が10%未満という問題もある。予後不良の理由として,簡単に早期診断できる画像検査がないことや,膵癌のハイリスクグループからの絞り込みが難しいことが挙げられる。超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)は内視鏡先端部に超小型超音波探触子が搭載されている。体外式超音波では皮下脂肪,胃,内臓脂肪が妨げとなるが,EUSでは消化管壁1cmを隔てて膵臓が観察できる。膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)は,膵管の中に粘液を産生する腫瘍があり,10~20年の経過で過形成から腺腫,癌に至る。最近では異所性に膵癌が発生することが注目されており,わが国ではIPMN併存膵癌と呼ばれている。筆者らが,切除例を除いたIPMN患者を積極的にEUSで経過観察したところ,102例中7例に膵癌が発生していた。その1例は,膵癌発見時にCTやMRIでは癌は確認できず,MR胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)では膵管の狭窄も尾側膵管の拡張もなかったが,EUSでは体尾部に直径7mmの低エコー腫瘤が認められ,その後,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(endoscopic ultrasonography-fine needle aspiration:EUS-FNA)で組織からstageⅠaの癌がみつかった。その段階で他の画像検査と比較したところ,検出感度はEUSが100%に対して,通常の超音波検査は39%,CT,MRIが50%前後で,EUSは小さい腫瘍もみつけやすいことは明らかである。膵癌の早期発見につながるハイリスクグループとしてIPMNが挙げられており,それに対してEUSを用いてフォローアップすると早期膵癌が発見されるのではないかと考えている。2013年版の膵癌診療ガイドラインでは,CT,MRIで膵癌が確定しない場合にEUSを行うとしていたが,2016年版ではEUSの重要性が認識され,疑わしい場合には速やかにEUSを実施することも選択肢の1つとなっている。筆者は和歌山県立医科大学赴任後に,和歌山県全域,南大阪地域の医師会,病院協会と協力して,糖尿病,家族歴,慢性膵炎などを有するハイリスク患者を積極的に拾い上げ,できるだけ早期に高解像度のEUSを用いて精査し,早期膵癌を発見して治療を行うという膵癌の早期診断プロジェクトを立ち上げた。これによって5年生存率が向上することを期待している。
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