連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第27回
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.63-67
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.27.04_0063-0067
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子育てに駆り立てるホルモンの役割は,比較的種を越えて保存されている。おそらく子育て行動の放棄は種の存続に関わるため,その仕組みを大幅に改変することはできなかったのであろう。母性の発現に関わる内分泌学的調節の研究は枚挙に暇がないが,父性を喚起するメカニズムも母性と似通っていることが最近の研究で明らかにされつつある。メス/女性は仔/子の誕生に先立って,妊娠・授乳に伴うホルモン変化が母性の開花の呼び水となる。一方,オス/男性も妊娠中のパートナーと生活をともにすることが,父性の芽生えを促している。すなわちオス/男性は妊娠を経験しないので,仔/子の誕生によって,卒然と父性が現れるのではなく,妊娠中のパートナーとの接触が序奏となることは前号で述べた。また父性行動とホルモンとの関係は,ホルモンが父性を発現させるが,子育てがホルモン分泌を調節しているという側面もある。ホルモン作用と必要に迫られた育児行動があいまって父性が形成される。本稿では父性発現に関わるテストステロンとエストロゲンの役割について解説したい。
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