連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第23回
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.76-81
発行日 2019年12月1日
Published Date 2019/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.26.04_0076-0081
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本シリーズはエストロゲンの脳における作用を扱ってきたが,エストロゲン作用はテストステロンにより拮抗されることもある。また,脳におけるテストステロン作用の一部はエストロゲンに転換されて発現する場合もある1)。したがって,エストロゲンの作用を論ずる際には,共存するテストステロン作用を考慮しないと片手落ちとなる。思春期においてテストステロンは男性における第二次性徴をもたらすが,思春期以降に分泌が高まるテストステロンは脳の統合的機能を改変し,このことで性特異的な志向,価値観,行動などが生ずる。つまり,テストステロンは男性の性器形成やその機能発現以外に,脳への作用を通じて動物性機能としての生殖に関与していることになる。特にテストステロンは他者に対して攻撃的,支配的,積極的行動を促すことが知られている。また,テストステロンは男性に特有な生物作用を発揮していると考えられてきたが,女性においてもテストステロンは男性のように可視的ではないが,女性の生き方に何らかの影響を及ぼしている。本稿では,テストステロンの脳に対する作用のなかで特に攻撃性を高める作用に着目し,性差に言及しつつその生物学的意義について考察を加えたい。
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