特集 漢方医学の妙諦を探る
特集にあたって
水沼 英樹
1
1弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学教授
pp.12-12
発行日 2019年12月1日
Published Date 2019/12/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.26.04_0012-0012
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婦人科領域の疾患は月経異常や排卵障害,あるいは更年期障害など生体の機能異常により発症すると考えられるものが多く,このため治療法の1つとして漢方療法が広く取り入れられてきた。実際,漢方薬の投与によって,月経周期が回復し妊娠に至った症例や更年期障害が軽快した症例,あるいは西洋医学的手法でどうにもならなかった症状が劇的に改善したなど,成功例の報告には枚挙に遑がなく,漢方療法は婦人科領域の治療法として確固たる地位を占めている。その反面,漢方療法は病態の理解において気血水論,陰陽論,虚実論といった独自の診療体系を有するため,西洋医学的な薬物治療学で育ってきた医師にとってはわかりにくいというのも事実である。また,同一の病名に対し複数の,しかも構成成分が重複している方剤が存在しているために,どれをどの順番で選択してよいかなど迷うことも少なくなく,多くの産婦人科医にとっては結局使い慣れており,かつ効果のあるなしが統計的に証明されている西洋医学的薬剤を選択するか,あるいは3大漢方と呼ばれる方剤の処方に留まり,なかなかその先に進めないのが実情ではないだろうか。
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