特集 再生医療への期待~各疾患領域における現況と展望~
先天代謝異常
梅澤 明弘
1
,
絵野沢 伸
2
1国立成育医療研究センター 所長
2国立成育医療研究センター
キーワード:
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)
,
肝細胞
,
細胞治療
,
新生児
Keyword:
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)
,
肝細胞
,
細胞治療
,
新生児
pp.49-52
発行日 2021年12月24日
Published Date 2021/12/24
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.39.12_0049-0052
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先天代謝異常のうち尿素回路異常は,出生直後から高アンモニア血症を呈する場合があり,迅速な治療が必要になる。本疾患では,正常な機能である尿素サイクルの一部に先天的酵素欠損があり,蛋白質の代謝産物であるアンモニアが解毒・排泄されないため,アンモニアの体内蓄積を生じる。アンモニアには神経毒性があり,その結果,嘔吐,意識障害,痙攣,呼吸障害などが起きる。また,頭蓋内出血の危険もある。血中アンモニア濃度(正常参考値:40~85μg/dL)が500μg/dLを超えると致死的であり,この濃度に至らなくても不可逆的な中枢神経脳障害を起こすことがあり,その結果,精神発達遅滞などの後遺症を起こす。高アンモニア血症は不可逆的な中枢障害を起こし,精神発達遅滞が生じるため,成長を待つ間もなく,アンモニア除去を行う必要がある。しかし,侵襲的治療(血液濾過透析,肝移植)は新生児に負荷が大きい。本疾患に対する有効な根治療法は肝移植手術である。しかし,ドナー不在や低体重,循環系の合併症により肝移植が困難な症例が存在する。低体重の症例では,移植片が大きすぎるため通常の生体肝移植手術が困難な場合がある。そのような理由から,われわれは,ヒト胚性幹細胞(ES細胞)由来肝細胞を移植することにより,新生児期に発症した患児の血中アンモニア値を安定させ,新生児期を乗り切り,肝移植へつなぐことができると考えた。「KEY WORDS」ヒト胚性幹細胞(ES細胞),肝細胞,細胞治療,新生児
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