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新しいがん免疫療法として注目されている遺伝子改変T細胞療法(genemodified T cell therapy)は,キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)-T細胞療法1)とT細胞受容体(Tcell receptor:TCR)-T細胞療法に分けられる。これらは,T細胞の腫瘍ターゲティング効率を高めるためのテクノロジーで,がん細胞を認識するCARあるいはTCRを発現させたT細胞を体外増幅し,輸注するという免疫細胞療法である。また最近は,T細胞だけでなく,NK細胞を用いたCAR-NK細胞療法の開発も進んできている2)。特に,急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL),悪性リンパ腫などのB細胞性腫瘍に対し,CD19抗原(B細胞の分化抗原)を認識するCAR-T細胞療法は優れた治療効果を発揮し3)-5),すでに細胞製剤として認可されている。さらに,ゲノム編集技術の応用も活発となってきている。1つは,T細胞のTCRをゲノム編集により破壊して移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)を防ぎ,他人のT細胞(同種T細胞)を用いることを可能にした方法(ユニバーサルCAR-T細胞療法と呼ばれる)である6)。この場合,iPS細胞をベースとした方法が期待され,海外では臨床試験も開始されている。また,CD19-CAR-T細胞療法の長期的有効性を高めるために,ゲノム編集技術によりCAR遺伝子をゲノムの特定領域に挿入する方法の開発が行われている7)。さらには,CAR-TやTCR-Tなどの遺伝子改変T細胞療法で,投与する遺伝子改変T細胞のPD-1遺伝子をゲノム編集技術により破壊し8),免疫チェックポイント阻害薬(抗体医薬)の場合に懸念される全身性の副作用を回避する工夫が試みられている。この方法は固形がんの場合に有用と思われる。本稿では,CAR-T細胞療法を中心に,最近の研究開発の動向について2,3の話題を紹介する。「KEY WORDS」遺伝子改変T細胞療法,キメラ抗原受容体(CAR),CAR-T細胞療法,TCR-T細胞療法,ゲノム編集
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