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近年の測定技術の発展により,血液や尿などの体液中のバイオマーカーを検出するリキッドバイオプシー(液体生検)の研究が急速に進んでいる。組織生検と比較して低侵襲に検体(細胞や核酸など)を採取して解析が可能であることに加え,繰り返し検査ができることやがんのheterogeneityについての示唆が得られるなど,既存の組織生検では困難であった検査も可能となるため,個別化医療への応用やがん研究の発展に有用であると注目が集まっている。表1に示すように,リキッドバイオプシーを用いた診断薬も国内外で盛んに開発されており,肺がんのEGFR(epidermal growth factor receptor)の変異を検出するRoche Diagnostics社の「コバス®EGFR変異検出キット」や,大腸がんのRAS変異を検出するシスメックス社の「OncoBEAM™ RAS CRC キット」が体外診断薬としてすでに承認を取得している。他にも血液サンプルから70以上の遺伝子変異が検出できる遺伝子パネル検査としてFoundation Medicine社の「FoundationOne® Liquid CDx」,Guardant Health社の「Guardant360®アッセイ」が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)のブレイクスルーデバイスの指定を受けて開発が進んでいる1)。解析対象の生体物質としては,循環腫瘍細胞(circulating tumor cells:CTC)や循環DNA(cell-free DNA:cfDNA),マイクロRNA(miRNA)などが研究されているが,現在最も研究が進んでいるのは血中のcfDNAを対象とした検査である。また,リキッドバイオプシーの用途は既存の組織生検の枠を超えて①疾患の早期発見,②遺伝子検査(遺伝子パネル検査を含む),③残存病変の検出,に大別される2)。現在,実用化まで開発が進んでいる検査は遺伝子検査が中心であるが,Illumina社からスピンアウトした米国のGrail社が100,000例以上を集めて大規模な臨床試験を推進しているなど,がんの早期発見に向けた開発も盛んである。一方で課題も存在する。検査対象とする腫瘍由来のCTCや核酸は体液中に微量しか存在しないため,臨床へ応用するためには安定した検出や測定技術の開発が不可欠である3)。次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)をはじめとした測定技術や機械学習による解析技術の発展により,遺伝子変異の検出や残存病変の検出には一定の成果はみられているが,特にcfDNA存在量が少ないと考えられる早期がんの発見には十分な感度が得られておらず,いまだにチャレンジングな領域である。本課題を解決すべく,早期ステージにおいても高感度でがん検出が可能であると報告されているmiRNAを対象とした検査が東レ株式会社など国内企業を中心に開発が進んでおり,今後の発展が期待される。「KEY WORDS」マイクロRNA,エクソソーム,尿,リキッドバイオプシー
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