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がん細胞は遺伝的に不均質な細胞集団であり,治療に対して抵抗性をもつサブタイプが発生することにより,根絶を困難としている。近年,遺伝子解析によりがん組織の性質を把握し,治療方針に反映させるクリニカルシークエンスが進められている。本手法は,組織を採取した時点でのがんの性質をスナップショット的に解析する。治療により刻々と変化するがんの性質をリアルタイムで追跡するには,定期的に複数回の組織生検を行うことが求められるが,患者への負担が大きいため現実的ではない。そこで近年では,血液や尿などの体液を利用したリキッドバイオプシー(液体生検)が注目されている。リキッドバイオプシーの主な標的としては,血液中に流れるがん細胞由来のDNA断片である血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)や,細胞から分泌された小胞であるエクソソーム,そして,がん組織から血管内に侵入し,全身を循環するようになったがん細胞である,血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell:CTC)が挙げられる(図1)。特に,CTCは血液中から採取可能ながん細胞そのものであることから,他の標的よりも多くの情報を取得することが可能であり,培養による薬剤スクリーニングや,転移メカニズム解明など,診断用途に限らず幅広い応用が期待されている。一方で,CTCは血液1mL中(50億個の正常血球を含む)に数個~100個程度しか存在せず,遺伝子解析はおろか,検出さえも困難な細胞である。そのため,現時点では後述するCELLSEARCH® Systemを用いた転移性乳がん,大腸がん,前立腺がん症例におけるCTC数計測による予後診断法のみが実用化されており,がん細胞そのものを低侵襲に採取できるメリットを十分に活かしきれていない。そこで本稿ではCTC回収とシングルセル核酸解析に向けた技術開発の状況と課題を筆者らの技術とともに概説し,シングルセル核酸解析から得られたCTCの特徴について紹介する。「KEY WORDS」血中循環腫瘍細胞(CTC),リキッドバイオプシー,シングルセル解析
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