特集 血友病診療の新たな展開
特集にあたって
大森 司
1
1自治医科大学医学部生化学講座病態生化学部門准教授
pp.7-7
発行日 2019年5月20日
Published Date 2019/5/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.37.05_0007-0007
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血友病は,第Ⅷ因子,または第Ⅸ因子の遺伝子異常によって,止血困難となる遺伝性の疾患です。先天性の凝固因子異常症としては最も多く,男児5,000~10,000人に1名の発症率です。遺伝性の出血性疾患の存在は,古くは2~5世紀のユダヤ教の聖典に記載されています。男児が続けて割礼の際に出血したら,第3子の割礼を行ってはならないことが明記されており,メンデルの法則や止血機構の詳細が明らかになるかなり前から遺伝性の出血性疾患が主に男児に発症することが知られていました。また,ビクトリア女王の子孫に続けて出血傾向の男児が生まれたため,この出血性疾患が“Royal Disease”と呼ばれました。その子孫であるロシア帝国の皇太子アレクセイもこのRoyal Diseaseで苦しんだことが,間接的にロシア帝国の消滅にもつながったことは歴史的に興味深い一面です。最近の遺伝子解析により,このRoyal Diseaseが血友病Bであることが判明し,ビクトリア女王は血友病保因者であったと考えられています。
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