特集 腸内細菌up to date:今まさに明らかになりつつある全身疾患への影響
特集にあたって
金井 隆典
1
1慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教授
pp.7-8
発行日 2015年10月20日
Published Date 2015/10/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.10_0007-0008
- 有料閲覧
- 文献概要
近年,「腸内細菌」,「腸内フローラ」といった言葉がメディアで頻繁に取り上げられるようになり,ある種のブームの様相を呈し,医学と関わりのない生活をしている人々にまで普及しつつある。一昔前には身近に肥溜めがあり,畑には堆肥がまかれ,汲み取り式便所からくみ上げ作業を行うバキューム車が街中を走っており,ヒトと糞便の距離感は近かった。しかし,上下水道の普及と相まって衛生環境の整備が進み,「臭いものには蓋」がされるようになってきた。そのなかで,「糞便」=「汚いもの」という認識がされてきた。店頭に並ぶ消臭剤・除菌剤の豊富な品揃えは,まさにこのような考え方の現れだろう。その一方で,アレルギー疾患・慢性炎症性疾患の増加や肥満率の上昇などに伴って,行き過ぎた衛生環境の追究がその一因として考えられるようになった。これらの病因に対する基礎医学研究の進展に伴って,腸内環境に注目が集まるようになってきた。一昔前には汚いものの代表とされた糞便が,花の女神であるFloraという言葉を冠して,現代人にもたらされた福音のように扱われていることは実に興味深い。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.