文学にみる病いと老い
(86)「死者の奢り」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.122-126
発行日 2015年4月10日
Published Date 2015/4/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.04_0122-0126
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文学界昭和32年8月号掲載。昭和33年3月「死者の奢り」と題して,他人の足,飼育,人間の羊,とともに文芸春秋新社より刊行。昭和34年9月「死者の奢り・飼育」と題して,他人の足,人間の羊,不意の唖,戦いの今日,とともに新潮文庫として新潮社より刊行。死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある叙情『死者の奢り』,療養所の厚い壁に閉じ込められた脊椎カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』,黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇『飼育』,傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた『人間の羊』など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた,芥川賞受賞当時の輝ける作品集。(文庫本カバー裏より引用)1957年,芥川賞*1の候補作として登場した『死者の奢り』という短編小説は,大江健三郎が東京大学*2の学生として世に問うた処女作品である。題材は,医学部の解剖用の死体を保存しておく水槽から,死者を移動させるという奇妙な仕事を経験した文学部の学生の話である。
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