特集 これでよくわかる自己炎症性疾患
序文
金兼 弘和
1
1東京医科歯科大学小児地域成育医療学講座
pp.243-243
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.34433/pp.0000000072
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自己炎症性疾患が世に知られるようになってまだ20年余りの歴史しかない.1999年に米国国立衛生研究所のKastnerらは従来家族性アイルランド熱などとよばれていた周期性発熱を呈する患者の原因遺伝子TNFRSF1を同定し,TNF受容体関連周期性症候群(TNF receptor-associated periodic syndrome:TRAPS)と提唱した際の論文のなかで “autoinflammatory”(自己炎症)と言葉を使った.ここに家族性地中海熱や高IgD症候群などとともに自己炎症性疾患という疾患概念が形成された.自己炎症性疾患とは自然免疫系の細胞やタンパクが関与する炎症を主病態とする非感染性疾患であり,単球,マクロファージ,好中球などの過剰活性化がみられる.一方,自己抗体や自己反応性T細胞は検出されず,自己免疫疾患とは区別される.臨床像は周期性発熱を特徴とすることが多い.狭義には前述したように遺伝子変異に基づくものであるが,痛風,2型糖尿病,動脈硬化,Alzheimer病なども広義に自己炎症性疾患と捉えられている.昨今の分子遺伝学的解析技術の進歩によって自己炎症性疾患にかかわる多くの遺伝子が同定されており,毎年のように新規疾患が追加されている.われわれ小児科医も多くの自己炎症性疾患あるいはその類縁疾患を診療する機会が増えていると思われる.
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