特集 PMS・PMDDのすべて
ねらい
寺内 公一
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座
pp.849-849
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.34433/og.0000000801
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「月経の前に心身の不調をきたす」という病態に関する最古の記述はヒポクラテスにまでさかのぼるそうだが,現代的な「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」と「月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)」の疾患概念確立の嚆矢は1931年のロバート・フランクによる「月経前緊張症(premenstrual tension:PMT)」提唱にある,というのが衆目の一致するところである.爾来100年近くの時間が経過したにもかかわらず,驚くべきことにこの疾患群の正確な病態はいまだに不明であり,さらにわが国においてこの疾患が効能・効果に明記された薬剤は1つも存在しない.男性優位社会における「女性特有の,死ぬわけではない病気」に対する無関心のみがそのような停滞の理由であるかどうかは定かではないが,しかし「女性活躍推進」を目指す社会において,女性の働きやすさがOECD加盟国中下から数えて何番目,というニュースが毎年メディアを賑わす現状を何とかしなければならないというコンセンサスの下に,特に働く女性の健康問題としての月経困難症・更年期障害とならぶ負荷であるPMS・PMDDに対する関心はかつてない高まりをみせている.PMSの有病率は5~20%,PMDDの有病率は1~3%,年間の経済損失は6,000億円とも6兆円ともいわれるのであるから,それは確かに由々しき問題である.
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